取説を読む人と読まない人

世の中には二種類の人間がいる。すなわち、『取説を読む人間』と『取説を読まない人間』である。

これは近代取扱説明書の父と言われるメイセッツ・マニャール(※)の言葉ですが、みなさんはどちらのタイプでしょうか?

取説というのは製品の立派な一部(部品)であり、製品の使いかたを正しく伝えるための重要なモノです。またメーカーとしてもユーザーに不利益を与えないために、まずは取説をしっかり読んでもらう必要があるのです。ところが、世間的に取説というのはいまひとつウケがよろしくない。読むのが面倒くさい、意味わかんない、つまんない…など理由はいろいろだと思いますが、まあ嫌いとまでは言わなくても何となく疎ましく、できることなら読まずに済ませたい、そんなイメージが取説には付きまとっているような気がします。もちろん取説読むの大好き!という奇特な方もいらっしゃるかとは思いますが、制作の現場では常に「ユーザーに読んでもらうための取説の改善」が重要課題として取り沙汰されているところを見ると、やはり巷で歓迎されている存在とは到底考え難いわけです。

今日の家電製品はおしなべて多機能で、その分操作も複雑化しているため、必然的に取説に盛り込まれる情報も増えざるを得ません。このように取説の提供側、および読み手側の双方にとって何かと悩ましい状況に対応すべく、(情報をユーザーへ正確に伝えるために、読まれるべき文章を簡潔・明快に記載することは当然として)取説の形態や構成といった側面からも都度さまざまな試行錯誤が繰り返されています。一例を挙げると次のような試みです。

  • 電子マニュアル化
  • イラスト表現を活用したテキスト削減化
  • 操作全般を網羅した取説とは別の、使い始めや基本的な操作の説明に特化した簡易マニュアルの制作

ともあれ、どうやってもあらゆる人々に読んでもらえる取説を作ることは現実的にムリな話でしょう。ただそれはそれとして、取説を読まない(読みたがらない)人々の存在が工夫や改善を促し、取説をより良いものへと進化させる原動力になっていると捉えることもできます。きっとみなさんが最近お求めになった製品の取説にも少なからず工夫が凝らされているはずです。取説を読むことにあまり気が進まなかった方もそういった背景に目を向けてみると、ちょっぴり興味を持って読めたりするかもしれません。とりあえずその取説、手に取って眺めてみませんか・・・?

※ メイセッツ・マニャール=架空の人物です。

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