「あなたの子供はとてもかわいそうですね」
「あなた、本当によく結婚できましたね」
こんなことを言われたら、きっとだれもが傷ついてしまいますね。
しかしこの言葉を発した人は、本当はこう言いたかったのです。
「あなたの子供はきっととてもかわいいのでしょうね」
「あなたは本当に良い結婚ができましたね」
全く、相手を貶そうと思って言った言葉ではありませんでした。
日本語を学習して間もない外国の方たちは、このような間違いをすることがあります。
1つ目の文では、「おいしそう」「たのしそう」の「~そう」という表現を、「かわいい」にも応用し「かわいそう」としました。
2つ目の文では、Goodの意味の「よい」を副詞的に使用するつもりで「よく~」としました。
悪気が全く無いのに、誤解を生んでしまうことがあります。
言葉と伝えたい気持ちが一致しない例は、ほかにもあります。
タイを旅行した時のこと、同じホテルに泊まっていたタイ人の女性が、あるとき私にこう話しかけてきました。
「Are you Japanese?アジノモトー」
アジノモト…?なぜ…?
私は一瞬何のことかわからず、ちょっとした会釈をしてその場を後にしました。
しかしその女性はそのあとも、私を見るたび「Hello,アジノモトー」というのです。
なんだろう…もしかして、からかっている?
そう思った私は、思い切って彼女に尋ねてみました。「あの、『アジノモト』って何ですか?あの調味料のこと?」
私がそう聞くと、彼女はびっくりした顔をして、
「え?『アジノモト』って日本語でHelloの意味じゃないの?」と言いました。
何がきっかけかははっきりとわかりませんが(テレビCMかな、と彼女は言っていましたが)、彼女はずっと「アジノモト」は日本語で「こんにちは」の意味だと思っていたのです。
タイでもあの旨味調味料は大人気らしく、日本を代表する挨拶の言葉を商品名にしたのだとずっと思っていたのですね。
誤解が解けて、私は彼女に日本語の正しい挨拶の言葉を教え、彼女は次から私に「こんにちは!」と話しかけてくれるようになりました。
私も「サワディーカ!」と気持ちよく挨拶を返しました。
一方、日本人同士でも誤解を生む表現はあります。
以前名古屋出身の知り合いに、「君、今日はずいぶんと、えらそうやね」と言われたことがあります。
自分では全く偉そうな態度をとっているつもりはなく、むしろその日は具合が良くなくておとなしくしていたくらいだったのに、急にこのように言われてショックを受けたことがあります。
しかし後でわかったのですが、名古屋では「つらそう」「しんどそう」の意味で「えらそう」という言葉を使うのだそうですね。
その知り合いはきっと心配して声をかけてくれたのに、私が面食らって返事もできず黙りこくっていたので、余計心配に思ったかもしれません。
コミュニケーションは難しいものですね。
ほんのちょっとの思い違いや、言い回しの違いで、傷ついたりびっくりしたり。
しかし誤解を恐れて黙ってばかりいては、理解は遠のくばかり。
言葉による誤解を重ねて、その向こうにある本当の相互理解へたどり着くために、気持ちを読み取る努力を続けたいと思いました。
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