ザ・イタリアの風景 ~チンクエ・テッレ~

チンクエ・テッレの名前を聞いたことがない方でも、冒頭の写真をカレンダーや雑誌でご覧になった方は多いのではないでしょうか。イタリアの北部、リグーリア州のジェノバに近い海岸の地域です。チンクエ・テッレはイタリア語で「5つの土地(Cinque Terre)」という意味で、海岸線に沿って5つの個性的な街が並んでいます。それらの街を結ぶトレッキングコースがあり、自然に親しみながら絶景を楽しむことができます。

何年か前、このトレッキングコースを歩いたことがありました。イタリアに住む友人が案内してくれたのですが、海岸のおしゃれなカフェ、浜辺に咲く色とりどりのパラソル、鮮明な色合いが自然の景色と調和する独特の景観を楽しみながら歩きました。

街と街の間は山道で、高台から海岸を見下ろすと、透き通った海で泳ぐ人々が見られます。ただ山道はアップダウンが思っていたより激しく、また道も凸凹で体力的にはかなり厳しかったです。炎天下でもあり、あとどれくらい歩くのだろうと友人に尋ねたところ、わからない、という返事(彼女は何度も来ているはずなのに)。ところどころに手作りの案内板がありますが距離などは書いてありません。イタリアの方々は、時間や距離をあまり気にしないのかな、と思いました。

頂上付近の高い草が茂る草原の中に、飲み物を売る露店がありました。柑橘類を使った飲料らしく、テーブルに黄色い果物が見えます。汗だくで歩いてきたので、一休みしようと近づいてみると、それはリモンチェッロの売店でした。
リモンチェッロはレモンのリキュールで、甘くアルコール度が高い飲み物です。炎天下の山道を登ってきた人が道の途中で飲むものではないと思って驚きました。しかし露店の店主は何の悪気もない笑顔で道行く人にリモンチェッロを売っています。さあさあ、もっと楽しみましょう、といったところでしょうか。
隣町が見下ろせる高台まで来て、私の予想をはるかに超える長丁場もようやく終わりが近づきました。眼下に広がる風景が冒頭の写真です。やっと終わりが見えた安堵もあってか、息をのむほどに美しく感じました。

最後に、チンクエ・テッレの郷土料理の1つ、カッポン・マーグロをご紹介します。エビやイカなどのシーフードと野菜を盛り合わせた前菜で、写真のように目にも鮮やかな料理です。初めて見たとき、この料理の色彩は、どこかチンクエ・テッレの街並みに似ている、と思いました。チンクエ・テッレでは、料理も、街並みも、住んでいる方々の美意識がそこかしこに感じられました。先にトレールを案内してくれた友人にチンクエ・テッレの魅力をきいてみました。彼女の答えは「ザ・イタリアの風景」。私が息をのむほど美しいと思った風景は、イタリアの方々が持つ美意識の表れの様でした。

最後まで記事をご覧いただき、ありがとうございます。

株式会社イデア・インスティテュートでは、世界各国語(80カ国語以上)の翻訳、編集を中心に
企画・デザイン、通訳等の業務を行っています。

翻訳のご依頼、お問わせはフォームよりお願いいたします。
お急ぎの場合は03-3446-8660までご連絡ください。