有名な童話「シンデレラ」。
ほとんどの人が幼い頃に触れ、そのあらすじを知っているのではないでしょうか。
最初私は「シンデレラ」といえばディズニーの「シンデレラ」しか知りませんでしたが、実は世界にはたくさんの種類のシンデレラ物語があります。
今回皆さんにその一部をご紹介したいと思います。
私は高校生の時に漢文の授業で「葉限(イエーシエン)」というお話を習って、シンデレラ物語の中国版があることを知り、興味を持ちました。
このお話は唐代の中国、860年頃に成立した『酉陽雑俎(ゆうようざっそ)』に掲載されています。
主人公の葉限は継母に可愛がっていた魚を殺され、深く悲しんでいたところ、仙人が登場しその魚の骨に願えばなんでも出してくれるだろうと話します。葉限が魚の骨に祈るとカワセミの羽で紡いだ上着と金の靴が出てきます。葉限はそれを身にまといお祭りに行きます。
ディズニーのお話では魔法使いが出現し、シンデレラを綺麗なドレス姿に変身させますが、「葉限」ではヒロインを助ける存在が魚になっています。
文化の違いがお話に出ていて非常に面白いと思いました。
また、大学でベトナム語を専攻した際に「タムとカム」というお話を習ったのですが、これもシンデレラ物語の一つです。
前半の展開は「葉限」と同じですが、後半はかなり残酷でグロテスクです。
主人公のカムは、お祭りで王子と出会い恋に落ちますが、義理の妹タムと継母の恨みを買って殺されます。殺された後に鳥や木の実に生まれ変わりますが、それでもなお王子の愛を受け続けます。最後は再び人間に生まれ変わって、王子と結婚します。そしてカムは復讐としてタムを熱湯に入れて殺し、継母にその肉を食べさせます。
これはひょっとして世界各地にシンデレラのお話があるのではないか?と思い、調べてみることにしました。
すると、シンデレラのお話は古代から続く民族の移動によって、バリエーションを生み出しながら世界のほとんどの地域に広まっていることが分かりました。その伝わり方は古代エジプトからヨーロッパに広がったルートと、中東からアジアに広がった大きく2つのルートが考えられています。
世界で最初のシンデレラの起源はどこかというと、諸説あり明らかになっていません。記録として残っている世界最古のシンデレラ物語はエジプトの「ロドピスの靴」という物語で、紀元前5~6世紀には存在していたそうです。
そしてなんと日本にもシンデレラ物語がありました。
「糠福(ぬかふく)と米福(こめふく)」というお話です。主人公が糠福、主人公をいじめる義理の妹が米福です。ベトナム語で割れた米粒は「タム」、糠は「カム」というので、上記でご紹介したベトナムの「タムとカム」との親近性を感じます。面白いですね。(ただ、「タムとカム」ほど残酷なお話ではありません。)
シンデレラ物語がこのように時間をかけて世界のほとんどの地域に伝わり、現在もなお人気があるのはすごいことだと感じました。最初は不運な主人公がライバルに打ち勝って成功の階段をかけあがっていくというストーリーは今も昔も世界の人に希望を与えるのだと思います。
今回触れた中国、ベトナム、日本のシンデレラ物語はごくほんの一部ですので、他の地域のシンデレラについて気になった方はぜひ調べてみてください。
参考資料:『シンデレラの謎』浜本隆志 河出ブックス 2017年
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