バブル景気が最高潮の頃、日本から世界を驚かす自動車が次々と販売されました。
トヨタからはセルシオ(レクサスLS)、日産からはスカイラインGT-R、ホンダからはNSX、そしてマツダからロードスター。
バブルの恩恵もあって開発費をジャンジャンつぎ込めた頃の自動車たちですが、お金をつぎ込めばいいモノが作れるわけではありません。開発費以上に夢と理想、情熱がつぎ込まれていました。
まずはセルシオ。トヨタには高級車は皇室にも献上しているセンチュリーと社長向けに作られたクラウンがあります。しかしこの2車種は日本国内専用として作られていました。
そこで、トヨタは高級車のブランド「レクサス」を立ち上げ、フラッグシップとしてセルシオ(海外名はレクサスLS)を開発し、1989年10月に販売を開始しました。
日本の大衆車メーカーが作った高級車に、メルセデス、BMW、ジャガー等錚々たる高車メーカーが、他を圧倒する日本の車の高品質と室内の静寂性に驚きました。セルシオを研究してはそのエンジンを真似したとかしないとか・・・。
高品質と静寂性を実現するために、問題となる部分を対処療法で解決するのではなく、原因まで遡って解決したといわれています。これは「源流対策」と言われ、徹底的な工作精度を追求することで成し遂げたそうです。
セルシオ(レクサスLS)はアメリカの若手ビジネスマンから支持を受けて、J.D.パワー社の新車購入ユーザーの品質評価で、メルセデス以上の評価をうけたそうです。
日産のスカイラインGT-Rは1989年8月に初代から数えて16年ぶりに3代目として発売されました。
この車が発売される数カ月前にはフェアレディZが発売されていましたが、GT-Rの方が今でも人気があります。
この頃の日産は「901運動」という計画を立てて、「1990年代までに技術の世界一を目指す」を目標に様々な技術を開発し、自動車に組み込んでいた時代でした。
「901運動」の走る実験室とも言える車がスカイラインGT-Rです。専用に開発された直列6気筒2.6Lツインターボエンジン、アテーサE-TSと呼ばれる前後の駆動力が自動で変わる4WD、位相反転制御をする4WSシステムのSUPER HICAS等、ありとあらゆる最新技術が投入されました。
スカイラインGT-Rは1990年に全日本ツーリングカー選手権に参戦して、当時最強だったフォードシエラRS500を打ち負かしデビューウィンを飾り、その後29連勝という記録を作りました。
この車は右ハンドルしかなかったため、海外には輸出されませんでしたが、映画『ワイルドスピード』で使用され人気となり、今はアメリカの「25年ルール」(製造から25年以上経った車は本来輸入できない右ハンドル車でも登録できる)と呼ばれるクラシックカー登録制度でアメリカに輸出されて国内市場の中古車価格は高騰しています。
ホンダのNSXは1990年9月に発売されました。NSXの名前はNew SportsCar Xの略で、Xは未知数を表すそうです。
当時のホンダはF1に参入し、マクラーレンにエンジンを提供して、ホンダパワーを世界に知らしめました。そんな中、ホンダの顔として誕生したのがNSX。F1の貴公子アイルトン・セナや中嶋悟などのF1ドライバーにテスト走行してもらい、スポーツカーとしての性能を高めました。
ライバルとしていた同時代のミッドシップのフェラーリは個体差があって乗る車によって評価が分かれるような代物でしたが、NSXは日本の工業製品らしく個体差がなく、快適でしかも速い!と世界中から賞賛を受けました。
しかしセダンではなく、スポーツカーを当時のフラッグシップにするとは・・・
なんともホンダらしいと思いました。
最後を飾るのはユーノス(マツダ)ロードスターです。前出の3台と違いこの車は高性能を目指したわけではなく、気軽に乗れるスポーツカーとして開発されました。開発の合言葉は「人馬一体」だったそうです。この車が生まれる前の1960年代はヨーロッパでは気軽に乗れるライトウェイトスポーツカーが流行していましたが、スポーツカーの常で、高性能を求め、当然価格も高くなって衰退していきました。そこでスポーツカーの人気を平成によみがえらせたのがこの車です。ライトウェイトスポーツカーの定番、オープン、軽い、低価格を実現し、世界で大ヒットしました。2000年には「世界で最も多く生産された2人乗り小型オープンスポーツカー」としてギネスに認定されるという途方もない記録を作って、今もなおモデルチェンジしながら売れ続け、世界で愛されています。
このように平成時代には世界を驚かせた日本車がこれ以外にも数多く発売されました。
近い将来、エンジンを載せた車は骨董品になるかもしれません。そうなる前に平成の魅力ある自動車を試してみてはいかがでしょうか?
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