趣味としての語学について

私は外国語を勉強することが好きです。大学では外国語系の大学でアラビア語と言語学を学んでいました。卒業して、イデア・インスティテュートで編集の仕事をするようになってからも、趣味でいろんな外国語を勉強しています。本稿では、私の趣味である語学についてお話ししたいと思います。

趣味としての語学

趣味なので、実用性などは考えず、なんとなく興味が出てきた外国語を勉強しています。
興味を抱くきっかけとしては、文字がカッコよさそうだな~とか、いまニュースであの地域が話題になっているから、じゃあ○○語を勉強してみようかな~といったものです。いまのところ、主にドイツ語、ロシア語、中国語の3つを勉強しています。これら3言語を選んだ理由としては、

  • ドイツ語:大学で第二外国語として選択して以来、ずっと続けているから。
  • ロシア語:ロシア・ウクライナ戦争が勃発して以来、ロシアの動向がよく注目されるから
  • 中国語:中華料理が好きだから。また、日中関係や東アジアにおける中国の外交がよく注目されるから

というものです。

勉強する上では、自分がやっていて楽しいことに主眼を置いています。自分にとっては、スマホにダウンロードした音声を聞いてそれを真似て発音してみたり、例文や活用表を紙に書き写したりするだけで楽しいのです。書き写していて飽きたり疲れたりしてきたらその日はやめにして、次の日に回します。毎日できなくてもOKというスタンスでいます。一文だけでも教科書の例文を紙に書き写したらその日はクリアです。動詞の活用や名詞・形容詞の格変化など、ややこしい単元に入ったときは、その課を終わらせるのに3週間近くかけることも珍しくありません。語学検定試験を控えているわけでもないので、先を急ぐ理由もありません。マイペースにのんびり取り組んでいます。

具体的な勉強法

勉強する場所は、主に行き帰りの電車の中です。時間にして、1日あたり合計40分ほど。電車の中でも出来る暇つぶしといえば、たいていは読書、スマホでのゲーム、動画視聴、SNS投稿などですね。それと同じような感覚で語学書を読んでいます。何曜日に何語を勉強するかは、完全にその日の気分次第です。家を出る前に、「よし今日は行きの電車では中国語を、帰りはロシア語をやろう」などと決め、その言語の語学書をカバンの中に入れます。
実際の勉強方法は、おおよそ以下のような手順を踏んでいます。

1.

あらかじめ教科書に付いていたCDの音声をスマホに取り込む。教科書のテキストを見ながらその音声をイヤホンで聞く。2~3回ほど聞いて、耳を慣れさせます。

2.

またテキストを見ながら音声を再生し、今度は自分でも真似して発音してみる。これも2~3回ほど繰り返します。もちろん電車の中なので、周りの迷惑にならないよう、かなり小さな声でつぶやくだけです。

3.

1文ごとに音声を再生し、語学書の例文をペンで紙に書き写します。字面を目で追っているだけでは頭に入らないので、実際に自分の手を動かして書くことを心がけています。席が空いているときは座りながら、空いていないときは立ちながら、片手にペンを持ちもう片手に教科書と紙を持って、例文を書きつけています。ただしこれも混んでいる電車の中では出来ないので、そのときは勉強をあきらめて別のことをやります。

4.

書き写した例文の各単語の下に、その単語の意味や、品詞・文法事項をできるだけ詳しく書きつけます。

今使っているドイツ語講読の教科書『独文解釈の基礎Ⅰ』(著:横山靖 1978 郁文堂)の第14課(37ページ)の文章を例として示します。

Die Schönheit der Wissenschaft ist nur dem Menschen, der Wissenschaft ausübt, ganz bekannt.

(拙訳:科学が持つ美しさは、科学を職業として営んでいる人にのみよく知られている)

この一文の各単語の下に、単語の意味や品詞などを、思いつく限り書き込みます。

ちょうど高校の古文でやったような、テキストを品詞分解し、逐語訳をつけるような感じです。各単語に逐語訳を付けて、それを通じて一文をじっくり解読していきます。私にとってはこのやり方が一番頭に入ってきやすいです。

5.

半日くらい経ったら、教科書を見ず、自分の記憶だけを頼りに、紙に例文を書いてみます。それから教科書を開き、例文と違っている単語には赤ペンで×を付けて、下に正しい単語を書きます。以下は、『改訂版 標準ロシア語入門』(共著:東一夫・東多喜子 2003 白水社)の第16課の「基本例文」(78ページ)の例です。

3番目の例文でいくつか単語の綴りとアクセント位置を間違えたため、赤ペンで正しい綴りを書いています。

6.

さらに2~3日経ったら、テキストを見ず、音声だけ聞きながら、例文を口で真似して言ってみます。つまりシャドーイングです。途中で舌がもつれてしまったら、その直前の箇所からもう一度やり直します。ひとつのテキストについて、だいたい3~4回くらい練習しています。音声のアクセントやイントネーションもそっくりそのまま真似するよう心がけています。

楽しければそれでいい

一般的に、語学は実利的な動機を伴うことが多いです。留学資格を得たくて、TOEFLやIELTSで一定の点数を取るために英語を勉強する。就活や転職で必要となるTOEICの点数を上げるために勉強する。あるいはビジネスや旅行などで、海外の人とも臆することなく会話できるようになりたくて英会話を練習する。大いに素晴らしいことです。一方で、私の語学には実利的な目的がありません。外国語に触れることそのものが目的です。音声を聞いたり、例文を書き写したり、語学書の練習問題を解いてパズル感覚で文法知識を運用したりする。あるいは、日本語の発想からは思いもつかないような言い回しを見て驚く。それが私にとっては楽しい。日々の生活に大いなる快楽をもたらしてくれるのです。人によっては、「一体3言語も勉強してどうするんだ。比較的使う頻度が高いであろう英語だけ勉強していればいいものを」と言う人もいるかもしれません。もっともだと思います。英語のスキルを伸ばす方が世の中で役に立つ局面が多いことでしょう。けれども成果を求めない語学学習があったっていいと思うのです。今日も私は勝手気ままな語学をやっていこうと思います。

おすすめの語学書の紹介

最後に、いま私が使っているドイツ語・ロシア語・中国語の教科書を紹介します。

ドイツ語:横山靖 (1978) 『独文解釈の基礎Ⅰ』郁文堂

上述の「具体的な勉強法」のところでも言及した大学受験用の長文読解の参考書です。1960~1970年代の大学入試のドイツ語試験で出題された文章を載せています。かなり硬派な参考書ですが、ひとつひとつの単語・構文にこれでもかというくらいに詳細な説明が付いているため、これを読めばドイツ語読解に必要な知識が十分身につきます。和訳問題対策をも想定した参考書であるため、「表現法」のコーナーでどのような日本語を書いたらよいかも説明しているのが特徴的です。

ロシア語:東一夫・東多喜子 (2003)『改訂版 標準ロシア語入門』(CD付・改訂版)白水社

タイトル通り、ロシア語の入門書です。全43課と結構多いですが、そのぶんひとつひとつの課を無理なく進めていくことができます。名詞・形容詞の複雑な格変化も少しずつ着実に覚えていけます。「応用例文」の会話テキストがほのぼのとしていて好きです。

ちなみにロシア語学者の黒田龍之助氏は、高校生の時に同書で(正確には改訂前の1971年初版の本で)最初にロシア語を勉強したと、エッセイ『ロシア語だけの青春』のなかで述懐しています。こちらのエッセイも、語学好きな人にとっては大変興味が持てる内容になっていますので、かなりおすすめです。

中国語:山下輝彦 (2016) 『中国語の入門』[最新版](CD付)白水社

こちらもタイトル通り、中国語の入門書です。左ページに例文、右ページに文法事項の解説が載っています。ひとつの課が見開き2ページのなかで完結するためとても扱いやすいです。例文は、語学書によくある会話文の形ではなく、独立した文を5個載せたものになっています。私はそのスタイルが好きです。ひとつひとつの例文が短いため暗記しやすいです。

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