言葉の大きく異なる中国人同士のコミュニケーション

中国は面積が広く、人口も多いので、各地で話されている言葉が大きく異なります。一口に中国語といっても、大きく7つの方言に分かれます。また、中国は多民族国家で、人口の約90%を占める漢民族のほか、チワン族、満州族、ウズベク族、モンゴル族、朝鮮族、チベット族を代表とする少数民族は55もあります。それぞれの民族にはそれぞれの言語もあります。このように、中国は方言と少数民族語が入り混じって、一つの国でありながら、自分の住んでいる地域を離れると、言葉が通じるかという不安も生じます。

地域間の言葉の隔たりを減らし、国民の交流を促進するために、1950年代に中国政府は「普通話(北京語をベースにした標準語)」を公用語に定めました。それ以来、普通話は全国に広がり、テレビやラジオ番組はもちろん、学校教育も普通話で行われるようになりました。その結果、今はどこに行っても、大体普通話は通じます。それでも、普通話の教育を受けてこなかった少数民族の人や、内陸の方言の強い地域の人など、普通話が話せない人はまだたくさんいます。中国教育部の調査によると、現在普通話によるコミュニケーションができない人は国民の30%もいるそうです。

私は中国の内モンゴル自治区の省都であるフフホトという町に生まれました。内モンゴル自治区はモンゴル族の主な居住地です。私自身は漢民族で、普通の小学校に通っていましたが、クラスメートにはモンゴル族の人もいました。彼らは私たち漢民族と同じように普通話を話しますので、特にコミュニケーションに困るようなことはありませんでした。10歳のときに、両親とともに沿海都市の天津に移り、首都の北京に近いこともあって、もっと一般的な普通話環境に変わりました。地元の大学に入ったのですが、なぜかクラスの半分ぐらいは南の蘇州から来た人でした。彼らの方言は私には日本語と同様に外国語のように聞こえました。もちろん、私たちの交流は普通話なので特に問題ありませんでした。

私が言葉の隔たりを初めて意識したのは日本に来てからです。日本に来て、地元と違って、中国の様々な地方から来た人に接する機会が増えました。特に留学先の東京外国語大学には、少数民族の人が多かったです。朝鮮族、チベット族など、今まであまり接したことのない人とも友達になりました。彼らはそれぞれの母語(朝鮮語、チベット語)を持っていながら、当たり前のように普通話をしゃべるのを見て羨ましくも思いました。しかし、その中でも、普通話がうまく話せない人もいます。一度大学で私と3人の少数民族の人たちと集まって話す機会がありました。その3人はそれぞれ朝鮮族、モンゴル族とチベット族の人でした。そのうちのモンゴル族の人とチベット族の人は普通話はあまり話せないので、4人は片言の中国語を混ぜ、ほとんど日本語で話していました。横で見ていた日本人に不思議そうに「あなたたちはみんな中国人じゃないの?」と聞かれ、みんなで笑いました。それは私にとっても、実に面白くて大変ありがたい経験でした。

言葉が大きく異なるからこそ、同じ中国人でありながら、異文化交流ができるのはやはり楽しいです。

最後まで記事をご覧いただき、ありがとうございます。

株式会社イデア・インスティテュートでは、世界各国語(80カ国語以上)の翻訳、編集を中心に
企画・デザイン、通訳等の業務を行っています。

翻訳のご依頼、お問わせはフォームよりお願いいたします。
お急ぎの場合は03-3446-8660までご連絡ください。