DTPとMS Office

PCでの事務作業には欠かせないMS Officeのアプリケーション。ビジネスシーンだけでなく、教育、医療などの現場、そして一般家庭にまで、私たちの生活の中に広く普及しています。PCの普及に合わせて、その操作習得の入り口として、必然的に使いはじめたという人も多いかもしれません。MS Officeは、作成したデータを完成データとして、手軽に印刷する事ができ、書類のオンラインでのやり取り等、日常生活のIT化にも則したツールといえるでしょう。

 弊社ではDTP業務(=Desk Top Publishing:パソコン上で印刷物のデータを制作すること)を印刷物制作の工程の一環として、その黎明期より取り入れています。扱うソフトの主流はDTPとしての専門性の高さを誇るAdobe Creative Cloud製品およびFrameMakerです。どちらも多様な印刷物やマルチメディアへの展開に特化しています。
 Adobe製品の技術習得は多くのDTPオペレーターにとって必須とされており、DTPオペレーターなら新規で何かレイアウトをする場合は、Adobe製品であるInDesignかIllustrator(まれにFrameMaker)を選ぶでしょう。しかし、高い普及率と汎用性に長けたMS Officeアプリケーションでのデータ作成のニーズも非常に高まっており、Adobe製品であろうがMS Office製品であろうが柔軟に使い分けるスキルが求められます。 

 そこで、今回はDTPオペレーター目線での、MS Office製品使用時の心構えを挙げてみようと思います。MS Office製品のうち、Wordは文書作成、Excelは表計算、PowerPointはプレゼン用、とそれぞれの特徴が一般的にも知られています。 
 とりわけWordは読み物系のレイアウト(文書作成)ソフトとして、DTPに携わる人にとって最も親近感がわくソフトではないでしょうか。IllustratorやInDesignのような高性能かつ自在なデザイン・レイアウトはできませんが、簡単な文書は手軽に新規作成でき、リンクや参照など便利な機能も使えます。しかしデータの作り方によっては動作の制約にデメリットを感じたり、意図せずレイアウトが崩れてしまうなど、「誰でも使える手軽なソフト」とは思えない手間がかかることもあります。さらにスタイルシートやテンプレートの設計も重要で、見積上は支給されたデータの一部を修正するだけの受注案件でも、データの全体のメンテナンス(リンクやフィールドの最適化など)まで必要になることがあります。 

 一方、Excelは計算式やグラフ作成などを目的としなくても、簡単な統計用資料や予定表、名簿等などの作成で使用されることも多いです。ただ、レイアウト向きのソフトではないので、簡単そうに見えるレイアウト調整も、思ったより時間がかかってしまうことがあります。例えば、バランスよくレイアウトするための微調整ができない、正確なレイアウトプレビューがしづらい、などです。特に日本語から英語に翻訳した場合はテキストの量が増えるため文字が隠れていないかなど神経を使います。

 そして、PowerPointはプレゼン資料作成用としてスライドショーやアニメーションなどの動的要素を有しています。レイアウト作業では専門性の高いDTPソフトやWordに比べて機能は限られていますが、仕上がりの直感的な見やすさとプレゼン資料としてのデザインの一貫性を簡単に実現できるよう設計されたソフトです。メニュー構成もシンプルです。PowerPointでのレイアウト作業は、Wordとは違い、細かいデータの造りにはこだわらず、見た目を重視して割り切って作業することを心がけています。

 日頃、このように悪戦苦闘することもありますが、MS Officeもあえて「DTP専用ソフトを使ってるつもり」で臆することなくアプローチしてみると面白い発見がたくさんあります。さらに製品のバージョンアップに伴い、使用感が改善されていることにも気づきます。DTP専用ソフトではないため望みのレイアウトにできないとき、別の解決策を見つけ、お客様に提案することもあります。MS Office製品でのDTP上の制約を楽しめるようになると、MS Office製品でレイアウトすることに前向きに取り組むことができると思います。

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