Jacks and Otedama

幼少期に通ったアメリカの小中一貫校は、午前の授業が終わると一度下校し、自宅で昼食を取った後、午後の授業を受けに再度登校するというシステムを取っていました。
そのため昼休みがなく、唯一の休み時間は午前中の授業の合間に設けられたRecessでした。
天気が良ければプレイグラウンドでダブルダッチ、鬼ごっこ、チアリーディングの練習。雨や雪の日には教室内で過ごします。小学生のときの仲良し3人組でよく遊んだのはJacksです。
金属製のコマのような形をしたJacksを床にばらまき、スーパーボールをバウンドさせて拾い集めるゲームです。1

学校から帰っても、兄弟を相手にお小遣いで手に入れたJacksでよく遊んでいました。それを見た母が「日本のお手玉遊びと似ているわね」と言って、お手玉を作って「寄せ玉」という遊び方を教えてくれました。2

海外生活において小豆は貴重品だったので、代わりに大豆を使いました。大豆入りのお手玉はずっしりと手に重くはありましたが、学校に持って行ってクラスメートにお手玉遊びを紹介しました。

Jacksやお手玉に類するゲームの起源については諸説あるようですが、一説には紀元前5世紀に、古代アナトリア半島(現在のトルコ共和国)のリディア地方を中心に栄えた国の人々によって発明され、ギリシャにもたらされた世界最古の遊び3とされているようです。それがシルクロードを経て日本に伝わりお手玉に姿を変え、かたやヨーロッパから大西洋を越えアメリカに伝わりJacksになったのかもしれません。そんな背景は知らぬまま、時を越え、国を越え、起源を同じくするふたつの遊びが偶然ひとつの教室で出会ったわけで、無邪気に夢中になって遊んでいたころのことが懐かしく思い出されます。

Jacksはスーパーボールが思いがけない方向に弾んでいくと見当たらなくなるし、弾みにくいところでは遊べない、その上、靴を履いていないときに踏むと涙が出るほど痛いという難点がありましたが、お手玉にはその心配がなかったためか、思いのほかクラスメートの人気を集めました。お手玉遊びをしたい人が増えて、私が持参する1セットでは足りなくなり、ある日担任の先生から「あなたのお母さんにRoom xxx(クラスは教室番号名で呼ばれていた)のためにもう1セットJapanese Jacksを作ってもらえないかしら」と頼まれました。「あなたにはJapanese Jacksの遊び方をまとめてきて欲しいの」と言われて四苦八苦しながらお手玉遊びのルールをまとめたこともありました。思えばこれが人生で初めて作った英文マニュアルでした。

 

手書きのマニュアルを添えた、あのお手玉はどうなったんだろう。
今もどこかの教室で雨の日の休み時間に誰かが遊んでいてくれるといいな―と思います。

1) How to Play Jacks

2) https://tokyootedama.jp
3)  日本のお手玉の会 (otedama.jp)

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