インド諸語の文字について

世界で一番人口の多い国インドでは、多くの言語が使用され、それぞれに独特の文字があります。イデアではインドの様々な言語を取り扱っています。日本ではインドの文字に触れる機会がなかなかないと思いますので、ここでインド語の文字をご紹介したいと思います。

インドの諸文字に触れるのに一番手軽なのは、インドの紙幣を見ることです。下記はインド200ルピーの裏面です。青色の囲みの中に、インドの代表的な15言語が書かれています。角ばっていたり、丸かったりと個性的ですが、違って見えても同じルーツをもっています。大別してブラーフミー文字に由来するインド系の文字と、アラビア文字ペルシア文字に由来する文字に分かれます。インド系の文字には多くの種類がありますが、構造的な原理はほとんど同じです。

15言語のうち、特に使用頻度が高い9言語についての文字を紹介します。

■ヒンディー:हिंदी, हिन्दी(「ヒンディー語」という意味。以下同様に言語名を表記)

インドで一番多くの人に使用されているのがヒンディー語です。使用されているのはデーヴァナーガリー⽂字で、特徴は「シローレーカー」という「横線」が文字の上に引かれていることです。このシローレーカーで繋がれた文字が1つの単語となり、文章の最後の区切りに「縦線」が入ります。書き順としては、単語を書いてから最後にシローレーカーを引きます。

デーヴァナーガリー文字は、子音と母音の組み合わせでできています。アルファベットで K+A=KAになるといった組み合わせで文字を作っていくイメージです。そのため、デーヴァナーガリー文字は、暗記しなければいけない量は多くはありません。

■ベンガル:বাংলা

ベンガル語は、ブラーフミー文字から発展したベンガル文字を用います。デーヴァナーガリーと同じように一つの単語内でつなげられる文字は上の棒でつなげて書きます。デーヴァナーガリーとよく似た文字(ন na や ব ba など)もありますが、大きく異なる字形を持つ字も存在します。文字の形はデーヴァナーガリーが曲線的であるのに対して尖っています。

■テルグ:తెలుగు

ブラーフミー文字より発展したテルグ文字を使用します。後述のカンナダ文字と関係があり、15 世紀頃に二つの文字に分かれたと考えられています。テルグ文字とカンナダ文字に特徴的なのは、直接発音に対応しないタラカットゥ(talakaṭṭu, カンナダ語では「結い髪、鶏冠、ターバン」)という部分が多く繰り返し表れる、という点です。多くの字母の上部に、右端が上に反った形の横棒の字画(タレカットゥ)があります。タレカットゥは、デーヴァナーガリーなど北方系文字にある上部の横線(シローレーカー)に相当します。

■タミル:தமிழ்

現行のタミル文字も、ブラーフミー文字をその源とします。各文字はデーヴァナーガリーのように頭線で繋がったりはせず個々独立しています。また単語と単語の間には空白が取られるなどの点は、ラテン文字と同じです。この文字が特に洗練され、美しいのには訳があります。チョーラ王朝(9~13 世紀)が半島南部を統一するのにつれて、タミル文字が王朝下の統一文字として普及しました。タミル文字は王朝のもとで文芸が隆盛するのに伴い、装飾性を加えて美しい文字となり、13 世紀頃にはほぼ今日の字体となりました。

■ウルドゥー: اردو

インド、パキスタンを中心に、2 億以上の話者をもつウルドゥー語を表記するために使用されるウルドゥー文字は、アラビア文字 28 を改良して作られたペルシア文字 32 に、さらに 3 文字を加えた 35 文字を基本としています。ペルシア文字にない 3 文字は、ヒンディー語系の単語に現れる tē,dāl,rē を表記するためにとくに工夫されたものです。これら 3 文字を除き、ウルドゥー文字の性格や機能は基本的にはペルシア文字と同じです。ご紹介しているインド語の文字のなかで、唯一右から左に書く文字でもあります。

■グジャラート:ગુજરાતી

文字体系としてはデーヴァナーガリー文字とほぼ同じですが、字形は全体にそれよりも丸みを帯びており、デーヴァナーガリー文字の上の横線(シローレーカー)がありません。

■カンナダ:ಕನ್ನಡ

カンナダ文字はインド系の文字で、南方ブラーフミー文字が発達してできたものです。カンナダ文字と先に記載したテルグ文字は、形態的相似からも明らかなように源が同じで、古カンナダ文字はテルグ・カンナダ文字とも呼ばれます。

■マラヤーラム:മലയാളം

見た目からもわかるように、マラヤーラム文字は基本構造などがタミル語によく似ています。マラヤーラム語の初期の文字は、次の三つの特徴から構成されたといわれています。
・タミルに伝わる、Pattuと呼ばれる古い歌
・マラヤーラム文字にサンスクリットの特徴を埋め込むこととなったManipravalamと呼ばれる伝説
・原住民による豊富な民謡
マラヤーラム語はタミル語の西域方言から発展し、9~10 世紀頃から固有の言語として現れました。

■オリヤー:ଓଡ଼ିଆ

オリヤー文字は、インドの東部にあるオリッサ州の大多数の住民によって用いられている文字です。なんともかわいらしい形をしています。オリヤー文字の見た目は、ベンガル文字やアッサム文字などとはかなり異なって、ほとんどの字が上半に円形を持つため、坊主頭が並んでいるような愉快な形をしていますが、実はデーヴァナーガリー文字の上の横棒が変形したものです。同じような構造を持ちながら、まったく違う印象の文字になっています。

これらのユニークな文字は、SNS上の顔文字でも使われています。最後に、インド語の文字を使った顔文字をいくつかご紹介します。

<デーヴァナーガリー⽂字>

 (त_त) (प.प)(ब,ब)(च.च)(ट_ट)(म”म)(व*व)(ढ,ढ)(ऍ,ऍ)(णAण)(ठैдठै) 
※目力があります

<オリヤー文字>

⁽⁽ଘ( ˙꒳​˙ )ଓ⁾⁾ 

<タミル文字>

 (இдஇ; ) 

<カンナダ文字>

( ಠωಠ) 

<マラヤーラム文字>

ദ്ദി ( ╹◡╹)  それではみなさんごきげんよう。 

参考サイト:

世界言語博物館 (chikyukotobamura.org)

ヒンディー語はどんな文字?デーヴァナーガリー文字を覚えよう! – Mayo (indiamylover.com)

1.<ベンガル語の基本の⽂字> | 株式会社カルチ (culti.co.jp)

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