蜃気楼の村へのお誘い

手っ取り早く海外気分を味わいたい時、私は外国文学を手に取ります。
今日はおとなり韓国、明日はチェコ、そういえば先週はドミニカ。
頭の中ではいつだって世界に飛ぶことができる。

幼い頃、母はときどき私を祖母に預けて都会に外出することがあったのですが、いつも必ず留守番のご褒美として世界の絵本をおみやげに買ってきてくれました。
それは『シンデレラ』だったり『赤ずきんちゃん』だったり、誰もが知る童話ではありますが、まだ2~3歳だった私は、
家が石でできてるのか~(正しくはレンガです)
おばあちゃんのかぶっている帽子、あれは何だろう?(ナイトキャップです。おばあちゃんじゃなくてオオカミです)
と異文化に興味津々で、いつまでもページをめくっていたものです。

世界の絵本が読書の原体験だったせいか、私は今でも日本よりも海外文学を好みがち。
特にお気に入りなのが、ラテンアメリカ文学。
強いお酒は飲めないし、豆料理も苦手、高地もダメ、運転のしかたも忘れたけど、小説を読んでいる間は現地に住んでいるかのような気分になれる。スペイン語を話す友達もいっぱいいる。

さて、そんなラテンアメリカ文学界で目下の話題をご存じでしょうか。
なんと!来週2024年6月26日、日本語版の初版から52年を経て、ついに!初めて!あの不朽の名作の!文庫版が発売されるのです!!!(企業ブログに相応しからぬ「!」の多さから、筆者の興奮をお察しください)

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長編小説『百年の孤独』は、こんな一文で始まります。

長い歳月が流れて銃殺体の前に立つはめになったとき、恐らくアウレリャノ・ブエンディア大佐は、父親のお供をして初めて氷というものを見た、あの遠い日の午後を思い出したにちがいない。

<引用>『百年の孤独』(著:ガブリエル・ガルシア=マルケス/訳:鼓直、新潮社、2006、p.12)

時間の感覚がぐにゃりと歪む、まるで催眠にかかったような陶酔感と、のっけに張られた強烈な伏線への高揚。
さて、これからどういう物語が始まるのかな? と、頭を空っぽにしてページを開いた私は、一瞬でこの物語の虜になってしまいました。

文庫化を待っていたら一生読むことは叶わない、だの、文庫化されるならそれは世界が滅びる時、だのとずっと囁かれていた『百年の孤独』ですが、決して茶化されていたわけではありません。
「面白いから(文庫化を待たずに)今すぐ読め!」と、ファンが熱烈に布教活動をした表れではないでしょうか。

文庫版『百年の孤独』は2024年6月26日発売予定。

つい先日書影も公開され、期待は高まる一方です。
(ちなみに大手配信サービスでドラマ化企画も進行中だそうで、これも見逃せません)
来週末、良かったら皆さまもご一緒に、ラテンアメリカのどこかにある「蜃気楼の村マコンド」に旅してみませんか。

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