
2025年3月、耳を疑うようなニュースが飛び込んできた。
デンマークが年内で手紙の配達を廃止するというのだ。
よく確認してみると、デンマークの国営郵便サービスは2025年末にすべての手紙の配達を終了し、デンマーク国内に設置されている約1500基の郵便ポストは6月から順に撤去されるという。このニュースを聞いて手紙はどうなってしまうの?と心配になったが、手紙や小包の配達をする民間企業が存在するため手紙を出したり受け取ったりすることは引き続き可能とのことだ。デンマークは世界で最もデジタル化が進んでいる国の一つで、様々な分野でデジタル化に対応したアプリがあり、現金を使う人は少なく、運転免許証や保険証などもスマートフォンに保存しているのだとか。このような背景から、デンマークの手紙の数は21世紀初めの14億通から昨年は1億1000万通にまで減少し今回のニュースのようなことになったというのだ。
私は手紙の配達がなくなったら少し寂しいと感じるかもしれない。なぜなら手紙が好きだからだ。みなさんは文通という言葉を聞いたことがあるだろうか。
文通とは手紙のやりとりをすることで、私は小中学生の時に国内在住の人や海外在住の人と文通をしていた。
今では考えられないことだが、当時は文通相手の個人情報が雑誌の文通コーナーに掲載されていて、その中から自分が文通したい人を選んで自由に手紙を送ることができた。
文通したい人が見つかったら、お気に入りの便せんに文通をしたいという思いを丁寧にしたため、ちょっと珍しいデザインなんかの切手を貼って郵便ポストに投函し、あとは返事が来るのを待つのみ。返事が来ればそこから文通は始まるのだ。時には返事が来ないこともある。返事が来なかったら縁がなかったということだ。
手紙を通じてどんなやり取りをするのかというと、もう昔のことすぎてあまり覚えていないが、家族のこと、学校での出来事、自分の好きなこと、自分が住んでいる街のことなど、本当にたわいもないことを書いていたのだと思う。
現代のメールやSNSのようなリアルタイムでのやりとりではないので、手紙はタイムラグがありもどかしいと感じる方がいるかもしれないが、当時の私はまったく不便に感じていなかったし、毎日夕方に自宅の郵便受けを覗くのが日課になり、手紙が届いていて封を開ける瞬間は本当に嬉しくて仕方がなかった。
しばらくやり取りを重ねて仲が深まってくると、封筒に入るくらいのちょっとしたプレゼントを手紙に忍び込ませたり、宅急便を使って地元の銘菓を送り合ったりもした。
海外在住の人との文通は英語でのやり取りだったが、当時はインターネットがなかったので、分厚い辞書と英語で書く手紙の文例集のような本を片手に、つたない英語で一生懸命手紙を書いていた。伝えたいことが正しく伝わっていたのかはわからないが、お互いに手紙を通して異国文化などを知る良いきっかけになったように思う。
今改めてインターネットで「文通」と検索をしてみると、今でも文通が存在しているようで驚いた。文通専門サービスがあり、事務局が手紙の郵送を仲介してくれるので本名や住所などの個人情報を明かすことなくお互いに安心して手紙のやりとりができるようだ。
いろいろなものが電子化され便利な世の中になったのは本当に素晴らしいことだと思うが、書き手の気持ちが伝わるあたたかみのある手紙や手書きの良さも後世に伝わるといいなと思う。
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