昨年の夏休みに姪夫婦が住むシアトルに遊びに行ってきました。
シアトルはアメリカの西海岸、ワシントン州の北部にあり、北に100キロ(東京から熱海ぐらいの距離)も行けばもうカナダ、という位置にあります。東京からは飛行機が偏西風にうまく乗れば8時間強で着いてしまうので、とても行きやすい街だと思います。
30年ほど前、東海岸への旅行の帰りに寄って2泊ほどしたことがあったのですが、そのときは、知り合いに会うのが目的だったのと、1日はMt. Rainierツアーに参加してしまったため、あまり街の中を見ることができませんでした。
今回こそはあちこち見て歩こうと意気込んで行ったものの、1年の7割は雨というシアトルらしく、滞在中毎日雨が降ったため、あまり遠出はせず姪の家の近くを見て回っただけでした。その中で一番ビックリしたのがThe Gum Wallと言われる路地です。
Starbucksの第1号店があることで有名なPike Place Marketという市場を抜けると、レンガ造りの古いビルの間に薄暗い路地があるのですが、その両側の建物の壁が約15メートルに渡って「噛んだ後のガム」でびっしり埋め尽くされているのです。” Oh, my goodness!” (なんてこと?)というか、”How gross!” (気持ち悪すぎ~!)というか…。
調べてみたところ、この路地の横にある小劇場への入場を待つ観客たちが1991年ごろに壁にガムで1セント硬貨を貼り付け始めたのが最初のようです。劇場に入る前にガムを捨てるところがないので壁に貼り付けたと書かれている記事もありましたが、1セント硬貨を貼り付けたのも、ガムを貼り付けたのも、ちょっと理解に苦しむ話です。
その後硬貨は取り除かれたものの、ガムは残り、2015年秋に初めて掃除されるまで訪れる人たちのガムが重なり続けたそうです。Pike Place Marketを管理するNPOが130時間かけて取り除いたガムの量は、なんと1トン以上!埋め立てにでも使ったのかしら?と思いましたが、単なるゴミとして焼却処理されたようです。
しかし、せっかくの清掃も虚しく、またガムを貼り付ける人が出てきて、すぐに元の状態に戻ってしまったそうです。それから9年経ったThe Gum Wallの姿は写真の通り。
これが日本だったらここまで積み重なる前に繰り返し掃除をしたり、防止策を講じたりするのでしょうが、野放しなところがアメリカらしく、今ではこのガムいっぱいの壁を見にわたしのような観光客が毎年たくさん訪れるようになりました。迷惑だったはずのガムいっぱいの壁が一大観光スポットとしてシアトルの街に観光客を呼び込むのに一役買うことになったのです。まさに「禍を転じて福となす」ですね。
さて、わたしと姪っ子が「すごいね~!」などと驚きながら歩いていたとき、知らない女性がガムを差し出して、”Would you like to contribute, too?” (あなたたちも貢献してみる?) と聞いてきました。テキサスからやって来た彼女、ひとりで試すのが恥ずかしかったのか、わたしたちを共犯者にしようと考えたようです。一瞬迷ったものの、せっかくなのでありがたくガムをいただき、ひとしきり噛んだ後に貼り付けてきました。もちろんすでにあるガムには触らないように十分気を付けながら。それにしても“contribute”って…。わたしはいったい何に貢献してきたのでしょう・・・。
わたしの頭の中では、ドラマの中でこの路地に逃げ込んだ犯人がガムの壁に貼りついて、ゴキブリホイホイに捕まったゴキブリのように逃げられなくなり、そして犯人を逮捕しようとした刑事も貼りついて動けなくなる…、そんな状況が浮かんだのですが、そんな撮影のための貢献ならちょっと良いかもしれません。しかし、まだそんなドラマや映画の撮影は行われていないようです。
世界の” Top 5 Germiest Tourist Attractions” (最も細菌性の高い観光名所トップ5) (https://www.travelerstoday.com/articles/7467/20130929/top-5-germiest-tourist-attractions.htm)の2位に選ばれたぐらいですから、ここで磔ならぬ「貼り付け」の刑を受けたい俳優さんはいないかもしれませんね。怖いもの知らずの方がいらしたら、ぜひここで「貼り付け」られた様子を撮影してSNSで公開してみてください。映画出演のオファーが来るかもしれませんよ。(笑)
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