「外国の友人に日本の料理を教えてあげたい」「海外旅行で食べたあの味を日本で再現してみたい」…外国の料理を作ってみることは、身近なところから異文化理解を深めていく良いきっかけだと思います。インターネットで様々な国の言語で書かれたレシピを見つけることができます。しかし実は、ある言語から別の言語に置き換えるというスタートと、料理の正確な再現というゴールの間には無数のハードルがあります。食べ物と料理に関わることはその国の風土や生活文化に根差しているだけに共通点が少なく、以下のようなさまざま困難が生じるのです。
単位
アメリカのレシピは計算機なしには読めません。重量はオンス(1 oz = 約28グラム)、長さはインチ(1 inch =25.4 mm)、温度は華氏、1カップは日本では200mlですが、アメリカは240mlです。
調理器具
欧米では、「かまど」の名残なのでしょう、オーブンが台所の主役で、コンロの下にガスオーブンが据え付けられているのが標準仕様のようです。日本でオーブンといえば、レンジと一緒になった電気式が主流ですね。私が持っているのも電気オーブンレンジですが、あちらのレシピどおりの温度と時間だと、なかなかうまい具合に焼けません。
一方、日本では冷めた料理の再加熱に、ヘルシーな蒸し料理にと大活躍の電子レンジ(microwave oven)ですが、海外のレシピではまずお見掛けしたことがありません。レンジに欠かせないラップ(米:plastic wrap、英:cling film)の存在感があちらでは薄いのも、そんな背景のせいのかもしれません。
食材
洋菓子を作るときに悩むのが小麦粉。日本ではグルテンの含有量によって薄力粉・強力粉と分けていますが、アメリカのレシピではほとんどの場合all-purpose flour(何にでも使える小麦粉)が登場します。日本の中力粉に近いそうですが、これでケーキを焼くと薄力粉よりも重ための食感に仕上がります。フランスは日本より細かく分類されていて、それぞれ番号が振られていますが、45番が薄力粉に相当します。イタリアでは精製度によって00番、1番…と分類されています。
肉は、日本と欧米では部位の分け方が違うので、特に困るところです。例えば牛丼のレシピに「ロース薄切り」とあっても、アメリカではこれにあたる商品区分が無いので、翻訳ではなるべく近いもので表すしかありません。でも、”つゆの染みた柔らかい肉を噛むと、よくつゆと肉の脂の旨味が混然一体となって…”という幸(口)福は、彼の地では再現が難しいかもしれません。
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