インバウンド向け翻訳の背景

イデア・インスティテュートの得意とする世界各国語への翻訳は、輸出企業の製品マニュアルを中心とした工業翻訳がメインですが、最近特に増えているのがインバウンド翻訳への需要です。そこで翻訳業界全体が注目しているその背景にある行政の取り組みについて今回は見ていきたいと思います。

日本政府は2020年に「訪日外国人旅行者数2000万人の高み」を達成することを目指してきました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの決定、アベノミクスによる円安効果、爆買い目的の中国からの訪日者数の増加などの要因が追い風となったこともあり、2013年には1000万人を超えて、その後も順調に推移し、2015年上半期(1月~6月)の訪日外客数は914万人に達しました。
当初の「2020年に2000万人」は前倒しで達成する見込みで、政府は3000万人に目標を上方修正しました。
この流れを受けて今後も継続的に外国人旅行者を呼び込み続けていくためには、訪日の動機につながる日本の魅力を発信し続ける必要があります。
これまでの行政の取り組みとして、在外公館や海外にネットワークを有する日本企業と連携し、海外で日本や訪日の魅力を訴える「ビジット・ジャパン」事業を進めてきました。
また「クール・ジャパン」政策によりコンテンツ(アニメ、ドラマ、音楽など)の海外展開やローカライズを支援(J-LOP+(Japan Localization and Promotion)事業)し、日本ブームの創出を企図しています。コンテンツビジネス以外にも、海外で売れそうな隠れた「ふるさと名物」を発掘し「JAPANブランド」商材としてプロデュースする事業も盛り込まれています。
入口として「外」で稼げるものを作り、それをインバウンドにつなげていくという流れを目指しています。2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」も、日本の食文化のブランド化を後押ししていくでしょう。

一方で、いざ日本に来てみたものの、安全安心、快適な滞在が可能な体制が整備されていることも重要な要素です。
東京オリンピックに向けて東京を中心に交通面のインフラ整備が進んでいますが、ハード面で現状表面化している問題は宿泊施設の不足です。最近よく耳にするAirbnbなどを通じた民泊を許可することによって宿不足を解決しようとしています。これまで旅館業法によってホテルや旅館などに制限されてきた宿泊施設の有料提供を、特区での規制緩和により民家にも広げる方針です。
細かい規定については個々の自治体が定めることになっており、今後安全や衛生を担保しつつ、快適な宿泊施設の選択肢の一つになりうるか、注目されています。
またソフト面の取り組みとして日本政府は「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」を策定し、美術館・博物館、自然公園、観光地、道路、公共交通機関等において、外国人目線に立った共通する指針を示しました。
「①禁止・注意」「②名称・案内・誘導・位置」を示すものについては、英語の併記を行うことを基本とすることや、多言語対応言語の代表例として英語・中国語・韓国語の3言語で、400以上の用語・文例についての対訳語、外国人向けに補足すべき解説文章や補足の考え方などがまとめられています。

今回は行政側の取り組み・支援を見てきましたが、行政が本腰を入れて取り組み、環境が整っている今こそ、翻訳業界にとってはインバウンド関連の仕事のチャンスが多くあると言えるでしょう。

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