オランダの小学校というと、どのようなイメージでしょうか?
ユニセフ・イノチェンティ研究所の調査によると、2020年の子どもの幸福度ランキング第1位はオランダです。(ちなみに日本は38か国中20位でした)
幸福度って何?どうやって図るの?と疑問がわきますが、日本とオランダの両方の学校に通った経験がある私としては、オランダがトップであるのはなんとなく理解することができます。
私が通っていたオランダの小学校は、人口が2万人位の小さな町にありました。
1学年は1クラスしかなく、各クラス25名ほどしかいないため、こじんまりしてとてもアットホームな感じでした。登校すると、輪になって先生に本を読んでもらったり、家であったことを話し合ったり。日本の教室のように机にじっと座って何かをするという場面は少なかったです。
午前中の休み時間にはおやつを食べます。
家から持参した新鮮なにんじんやパプリカ、りんごなどを丸ごとかじりながら友人たちと校庭でおしゃべりをするのが定番でした。生のにんじんをそのまま食べている様子は衝撃的でしたが、次第に慣れて私もいつも果物やにんじんを食べていました。午前中の授業が終わると、いったん家に帰って昼食を食べます。食後にまた学校に戻って残りの授業を終えると1日が終わります。学校へ持っていく荷物もあまりなく、宿題がでた記憶も全くありません。そして放課後は毎日友達と外で遊びまわっていました。
クラスメートにはトルコから来た男の子が1人いて私は毎週2回、彼とオランダ語の授業を個別に受けていました。別の教室でオランダ人の先生からオランダ語の文法を教わったり、単語を習ったり。先生を含めて3人だけの授業でしたが、先生の熱心な指導のおかげで少しずつオランダ語も理解できるようになりました。
読み書きよりもとても苦労したのがオランダ語の発音。2022年1月から始まるNHK土曜ドラマ「わげもん~長崎通訳異聞~」でKing & Princeの永瀬廉さんがオランダ語の【g】の発音に苦戦したそうですが、私も【g】の発音には苦労をしました。オランダ語はカタカナ表記ができない発音が多く、曖昧な感じです。喉の奥から発音をして【グ】でもなくどちらかというと【フ】に近い音。例えば日本でも有名な画家である「ファン・ゴッホ」は「ファン・ホッホ」に近くなります。
先生に何度も発音を直されながらもやっと”Goed!”(英語のGood!の意味ですが発音はフットに近いです)といわれることが増えるととても嬉しかったです。そのおかげか【g】の発音は今でも得意です!
勉強面で印象的だったのは「留年制度」。勉強についていけないと進級するのではなくて、もう1年同じ学年の授業をうけることになります。同じクラスだった男の子が進級できなくて1つ下の学年のクラスにいたときはとても驚きましたが、本人も周りも特に変わった様子もなかったため、普通のことなんだと思えました。分からないまま進級するのではなく、「やり直し」を当然と受け止めてあげられることは素晴らしいと思います。
オランダの学校にも1年を通して行事がいくつかあります。
何よりも楽しかったのは誕生日。
オランダの小学校では誕生日の人がみんなにプレゼントを配る習慣があります。
私は母の手作りお菓子を持って行っていました。学校では先生手作りの王冠をかぶり、クラスのひとりひとりにお菓子を配ります。お菓子を食べおわるとみんなでオランダの誕生日の歌を歌ってくれます。
そして最後に万歳をしながら叫びます。
Hiep hiep hoera! (ヒップ ヒップ フラー!)
Hiep hiep hoera! (ヒップ ヒップ フラー!)
Hiep hiep hoera! (ヒップ ヒップ フラー!)
自分のクラスだけではなく他の学年の友人にも持参したお菓子を配るため、クラスメートにも付き添ってもらって他のクラスに行きます。授業を中断することになってしまいますが先生も分かってくれているため、お目当ての友人の席に行って誕生日のお菓子を渡していました。とっても特別な感じがして私は大好きでした。
日本のようにみんなで1つのことを作り上げる素晴らしさを学ぶ機会はあまりないかもしれません。ただ移民の子どもも多く、クラスにいろいろな国の生徒がいるのが当たり前な生活でした。常に先生の話を聞く受け身の授業ではなく、どちらかというとみんなで考え、お互いの意見に耳を傾けることが多かったように思います。宿題に追われることがなかったので、私の小学校時代は今の日本の小学生よりものんびりした生活をしていました。
毎朝の体温測定や、対面授業と家でのオンライン授業を繰り返している子どもたちをみていると、便利な世界にはなったと思う反面、とても窮屈な感じがしてしまいます。「自由」の大切さを再認識できたいま、彼らがもう少し余裕のある学校生活を送ることができるといいな、と心から思います。
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