赤ちゃんは語学の天才?

学生時代、英語の勉強に苦労した人は多いと思います。私は学生時代から英語とスペイン語を学んでいます。翻訳会社で働いていることもあり、今も細々と学習を続けています。しかし、どんなに時間をかけて学んでも、ネイティブスピーカーのように聞く・話すことは難しく、語学学習に終わりはないと感じています。赤ちゃんのように楽に自然に(?)言語をマスターできればいいのに...と、つい考えてしまいます。

赤ちゃんのときに母語をどうやって学んだか、覚えている人はいませんよね。
赤ちゃんは、いつから、どうやって母語を学ぶのでしょうか?

正解は「おなかの中にいるときから」だそうです。
赤ちゃんは羊水の中にいるので、周りの声がはっきりと聞こえているわけではありません。
プールや海で水中に潜っていると、音がよく聞こえませんよね。赤ちゃんは羊水の中で、母語の音の強弱や高低、リズムを聞き、音になじんでいるのです。

30年ほど前に、ある研修者のグループが、生後4日のフランスの赤ちゃんに、母語とそれ以外の言語を聞かせ、おしゃぶりを吸う強さを調べる実験をしたそうです。この実験は、発音が似ていない「フランス語とロシア語」を使って行なわれました。すると、赤ちゃんは母語のフランス語を聞いた時に、ロシア語を聞いた時より強くおしゃぶりを吸ったのだそうです。生後まもない赤ちゃんが、母語とそれ以外の言語を聞き分けていることが分かります。

また、赤ちゃんは生まれてから、家族や周囲の人が話している言葉をたくさん聞きます。繰り返し聞くうちに、母語で使われている音を聞き分けることができるようになります。
一方、母語で使われない音や、母語で実際に使われていても区別されない音は、聞き分けることができなくなっていきます。

母語で使われない音とは、例えば、日本語にはない英語のth、r、lの音などのことですね。 母語で使われていても区別されない音、とはなんでしょう?
例えば、日本語の「さしすせそ」のうち、「し」の子音は厳密には「さすせそ」と違う音です。「さしみ」と発音してみてください。「さ」と「し」では、舌と歯の位置関係が違うことが分かります。日本語の「し」は「しー」と伸ばして発音すると英語の「she」に似た音になります。もしも、「さすせそ」と同じ子音で「し」を発音すると、「すぃ」の音になります。「すぃー」と伸ばして発音すると、英語の「see」と似た音になります。日本語の母語話者は「さしすせそ」の子音を区別せず、同じ音だと思っています。そのため、英語の「she」と「see」を聞き分けることが難しいのです。

また、日本人は、英語の「l」と「r」を聞き分けたり発音したりするときに、特に苦労しますよね。生後10か月までの日本の赤ちゃんは、英語の「l」と「r」を難なく聞き分けることができますが、1歳ごろからは、聞き分けることができなくなるそうです。私たちが英語の聞き取りや発音に苦労するのは、母語である日本語を学んだ結果なのです。

赤ちゃんは成長とともに、母語の音のかたまり(単語など)をたくさん覚えてストックしていきます。そして赤ちゃんはただ単語を覚えるだけではなく、音のかたまりのパターンを手がかりにして、少しずつ母語の文法を身に着けていくのです。
赤ちゃんは母語を聞いて学びますが、ただ聞いているだけではありません。聞きながらたくさん考え、文法の仕組みを推理します。そして実際に声に出して話し、何度も間違えたり教わったりしながら、母語を身に着けていくのですね。赤ちゃんを見習い、間違えることを恐れず外国語を学んでいきたいものです。

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