「英語」「発音」「歌」「上手」などの言葉を並べて検索してみると、『英語が得意な人は歌もうまい?』『歌が上手な人は英語の発音がキレイ』という内容のウェブページが引っかかります。
この説を、英語に限らず「外国語の発音がきれいな人は歌も上手なことが多い」と言い換えて、なぜそう言われているのかを考えてみたいと思います。
日本で生まれ育った日本人が初めて学ぶ外国語は大抵の場合英語ですが、英語をきれいに発音できるようになった日本人は、他の外国語も練習すればきれいに発音できるようになるはずです。
これには、「音を聞きわける力」と「聞きとった音を自分で再現する力」の2つが大きく関わってきます。
「音を聞きわける」とは、英語で例をあげればrやlの発音、日本人と英語ネイティブスピーカーの”Apple”の発音には違いがある、とわかるということ。そして「聞きとった音を自分で再現する」とは、その聞きわけた音や話し方の調子を「こんな感じだったよな」と真似できるということです。
この『真似する』というのがなかなか難しく、発音に違いがあるとわかっても、口のどこをどう動かせばそんな音が出るのかがわからなければその音は真似できません。
聞きとった音を自分で再現する能力が高い人は、「この音は口のここをこうすれば出せそうだな」という口の中や喉の感覚、音と口の動きを結びつける勘が鋭いのではないかと思います。
これは、例えばアフリカのコイサン諸語のような、「え?なにこれ?」と耳を疑うような音に対しても同じことです。もちろん日本人に限らず、外国人が外国語を学ぶときにも同じことがいえます。
ところで、ここまで度々出てきた「発音」と、歌に大きく関わる「音程」とは別のものです。
発音が主に舌や唇の動きによるのに対して、音程は声帯の動きによって調節されます。
日本語話者が同じ日本語の歌を歌うのに上手・音痴と差が出るのは声帯のコントロールにうまい下手の差があるためです。
冒頭の「外国語の発音がきれいな人は歌も上手なことが多い」という説に話を戻すと、外国語の発音がきれいな人は音を聞きわけ、再現する能力が高く、口の中に加えて喉の奥の声帯の動きを調節する勘も鋭いために歌も上手な人が多いのでしょう。
ただし、全員がそうだといえるわけではありません。
外国語の発音はきれいだけど歌はそうでもないという人は、発音を聞きわけることも真似することも上手ですが、歌うための声帯のダイナミックな調節が苦手なのかもしれません。
最後にひとつ。外国語の発音も歌も上手い人は、人の物まねも上手な気がします。
やはりこれも、耳と口の感覚の鋭さのためでしょうか。
参考:コイサン諸語(サン族)
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