フライドチキンや鶏唐揚げ、鶏の竜田揚げなどの揚げ鶏料理は、居酒屋でもお弁当のおかずでも定番の人気メニューですが、韓国では「チキン(치킨)」という語自体がこのような揚げ鶏料理を指すほど、国民的な食品です。韓国人のとてつもない「チキン好き」をうかがい知る例として、韓国にはチキン専門店を名乗る主要ブランドだけでも、なんと30近くあります(注1)。勢いが止まらない韓国の熱い「チキン」の世界への入り口をご紹介いたします。
日本の居酒屋では、鶏の唐揚げは様々なおつまみの一つとして注文されることが多いですが、韓国の「チキン」はメインの料理として提供され、専門店で注文する場合、基本単位は一羽分を指す「ハンマリ(한 마리)」で、その半分の量の「ハーフ(하프=half)」が最小単位です。チキン専門店の中には、「一羽の価格で二羽分」の分量を出すのを売りにしている店もあるくらいです。かなりボリュームのあるメインディッシュであることが分かるでしょう。そして、この山盛りのチキンを大勢で賑やかに食べるのが韓国人の大きな楽しみの一つです。「チキン」と合うお酒としては、ビールが一番人気です。ビールは韓国語で「メクチュ(맥주)」(漢字の「麦酒」の韓国語読み)。「チキン」を食べながら「メクチュ」を飲むことを指す「チメク(치맥)」という造語は、「今夜チメクに行こうよ」、「やっぱりチメクが一番だよね」のように、すっかり日常に溶け込んでいる言葉でもあります。
最近では日本でも「ヤムニョムチキン」がコンビニエンスストアやスーパーマーケットのお惣菜としても日常的に並ぶようになってきました。そのため、「韓国のチキン」というと、ヤムニョムチキンしか浮かばない方々も多いかもしれません。韓国のチキン専門店の代表的な味は三種類、衣に味のついたフライドチキン、揚げた後にヤムニョム(甘辛味のたれ)をつけたヤムニョムチキン、同じく揚げた後にカンジャン(醤油)味のたれをつけたカンジャンチキンです。どれも日本のから揚げよりも厚くてサクサクな衣が特徴です。先にも述べたように、数十も専門店があるくらいなので、それぞれの店が独自の特徴を出して顧客を獲得すべく、しのぎを削っているのです。特別な高級オリーブ油を使用して香りとヘルシー感を売りにする店もあれば、新しい良い油を使っているというアピールのため「60羽ごとに油を替える」という原則を打ち出している店もあります。
そして、味のバラエティーも重要なポイントです。独特な味付けをいくつか紹介しますと、
- チーズパウダーをまぶしてあり、ヨーグルトソースにつける「プリンクルチキン」
- 生の刻みニンニクが入ったソースをつける「マヌルアルマーニチキン」
- 玉ネギがたっぷり入ったクリームソースをつける「リミアンチキン」
- きな粉(インジョルミ)がかかった「インジョルミチーズチキン」
- イチゴミルク、バナナ、メロンの三つの甘味を楽しめる「フルーツチキン」などなど…
ちょっと驚くような組み合わせでしょう。これは様々な店の人気商品のほんの一部で、10種類以上の味つけがある専門店や、「毎年2種類以上の味を出す」と宣言している店もあり、種類の多さは本当に驚くばかりです。
最近の韓流ブームの影響で、日本の国内でも韓国のチェーン店が増えてきています。最初は代表的な三種のみだったのが、徐々に異なる味付けの商品も増えてきましたので、是非色々な味を楽しんでいただけたらと思います。そして韓国の本場チキンも是非いつか機会があればお試しください。
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