
皆さんは「結果」と「過程」どちらを重視しますか?
私は幼いころから「結果より過程を大切にしなさい」と言い聞かせられて育ってきたものの、わかりやすいがために特に他者からの評価の基準となりやすい「結果」に執着してしまいそうになることもしばしばあります。もちろん「なにかを達成すること」ではなく、「そこまでの道のり」が目的となってしまうのも考えものですが、「道のり」を着実に歩んで得た「結果」と、「道のり」をすっ飛ばして得た「結果」ではその価値は大きく違ってくるのではないでしょうか。
そこで今回は自戒の意味も込めて2つの作品から、このテーマについて言及しているフレーズをご紹介します。
『ジョジョの奇妙な冒険』 第5部「黄金の風」
コミックス第59巻 「今にも落ちてきそうな空の下で」より
「そうだな…わたしは『結果』だけを求めてはいない。『結果』だけを求めていると、人は近道をしたがるものだ…近道した時、真実を見失うかもしれない。やる気も次第に失せていく。大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている。向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は犯人が逃げたとしても、いつかはたどり着くだろう?向かっているわけだからな…違うかい?」
ネタバレになってしまうため詳細は書きませんが、かつて警官だったアバッキオというキャラクターの元同僚のセリフです。事件現場で地道に指紋を採取する元同僚を見て、そんな苦労をしてもし証拠が何も見つからなかったら?見つかったとして犯人が弁護士などを利用してずる賢く罪から逃れたら?とアバッキオが問いかけたシーンです。
最終的に自分の求めていた結果が得られなかったとしても、ゆっくりでも着実に進んでいれば、そこへ向かおうとしていた時間や努力が全て無駄になるわけではありません。逆に結果だけを求めて近道をしてその場をしのごうとしても、後からぼろが出てきて結局失敗に終わってしまうことも多々あります。
このシーンを含む、第5部「黄金の風」での最後の敵が、時間(過程)を飛ばして自分の勝利(結果)だけを残す、というこの名言の対極にある能力の持ち主であるということも相まって、「大切なのは『真実に向かおうとする意志』」というフレーズはメインキャラクターのセリフではないものの、多くのファンの心に残っている言葉であり、シリーズ全体を通して作者の荒木飛呂彦先生が伝えたいメッセージのひとつではないかと思います。
次にインド映画からこちらの名言をご紹介します。
インド映画『RRR』(2022年公開)より
「『責務とは行為にある。その結果にあらず。行為の結果を動機とせず、結果に執着するな。』私は結果を求めない。飢えた我が血の最後の一滴まで、責務に向かって突き進むのみ。」
(訳:藤井美佳、テルグ語監修:山田桂子)
この一節は、S・S・ラージャマウリが監督を務めたインド映画『RRR』の主人公の一人、ラーマという人物のセリフではありますが、前半部分は元をたどればインドの叙事詩『マハーバーラタ』の一部である「バガヴァッド・ギーター」という聖典から引用しているようです。
こちらも盛大なネタバレを含むため詳しくは書けませんが、とある使命を全うするという結果に執着していたラーマが、ビームという人物に出会い彼の生き様に触れたことで、考え方を改めた後のシーンです。
聖典からの引用なので、成功と不成功を平等のものとみなし、成功を得たいという欲を捨てて諸々の行為をせよ、という教えは一般人には少しハードルが高いように聞こえますが、結果に執着しない、と考えれば普段の生活でも実践できることではないかと思います。自分が求めている結果にたどり着くことさえできれば、その過程で自分の信念を曲げることになったり、自分が大切にしているものを裏切ることになっても仕方がないのでしょうか。何かを成し遂げるという結果への強い執念が大切な場面もあるかもしれませんが、あとで後悔しないためには、自分に後ろめたくないやり方で進み続けることも大切な気がします。
漫画の主人公のようにタイムリープ能力や前世の記憶がない限り、私たちはみな1回目の人生を生きているわけで、学校も会社も入ってみなければわからないことがほとんどであるにも関わらず、ノウハウもない中で最善だと思う方を選択し、その環境で努力し続けて結果を出す必要があります。思っていたような結果が得られず、こんな結果になるなら別の道を選んだのに…と考えることも多々ありますが、結果を知ったうえで選択することはできません。もちろん求めている結果にたどり着くことができるのが一番良いのですが、やるなら覚悟を決めて、たとえどんな結果になったとしても悔いが残らないようにものごとを進めることが重要だと思います。遠回りだったとしても、自分が歩んできた道こそが正解だったと言えるような生き方をしたいです。
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