表現の違いを楽しもう!~日英のことわざ、慣用句比較~

学生時代、イギリス人アイドルグループにはまったことがきっかけで、英語の勉強を頑張っていた時期がありました。最初の頃は、歌詞は日本語訳で意味を理解し、原文は見て覚えるだけでしたが、そのうち英語が少しずつ理解できるようになると原文と日本語の微妙なニュアンスの違いに気づけるようになり、日本語と英語の表現の違いを面白いと感じられるようになりました。この経験から、歌詞よりももっと短く、国の文化や生活が色濃く映し出された日本語のことわざや慣用句は英語では何というか気になり、調べてみることにしました。今回は私が調べたことわざや慣用句の中から面白いと思ったものの一部を紹介します。

  • 花より団子

意味: 風流より実利をとること。外観よりも実質を尊ぶこと
英語: Bread is better than the songs of birds
訳: 鳥の歌よりパンの方が良い

これは日常生活でもよく耳にすることわざですね。由来は江戸時代にさかのぼります。平安時代に始まったお花見の文化は、最初は桜を見ながら和歌を詠み、風流を楽しむイベントでした。しかし、江戸時代ごろ、お花見は庶民にも広がり、やがて花見の風流を楽しむよりも花見をしながら団子を食べることを好む人が増えました。日本人なら「花より団子」ということわざから、お花見をしている中で団子を食べる様子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

英語の方はどうでしょう。直訳すると鳥の歌よりパンの方が良いとなります。森や公園でのピクニックで鳥のさえずりを聞くよりもパンに夢中になってしまう様子が思い浮かべられませんか。日本語では古くからあるお花見という文化で花見団子を食べる慣わしが、英語ではピクニックで自然を楽しみながらパンを食べる情景がことわざ一つにも浮かび上がります。ことわざの中に描かれる情景や食べ物にも文化の違いが感じられますね。

次のことわざはどうでしょうか。

  • 捕らぬ狸の皮算用

意味: 手に入るかわからない不確かなものに期待をかけて、計画をねること
英語: Don’t count your chickens before they are hatched.
訳: 卵が孵る前にひなを数えるな

狸を捕らえてもいないのに、皮を売って儲ける計算をしている愚かな様子がことわざの教訓になっています。昔は狸の毛皮は高級品であり、冬には狸の毛皮が防寒具として高く売られていたことからこのことわざが使われるようになったとされています。狸は元々極東にしか生息しない生物で、日本にも固有種の狸が生息しているようです。そのため「狸寝入り」や「狐と狸の化かし合い」など、慣用句にも多く使われていたり、狸の置物がお店の前によく置いてあったり、日本人の生活にはとてもなじみのある動物です。

一方で狸が生息していない英語圏では同じような意味のことわざで、人々の生活により関わりの深いひよこや卵を用いて例えられています。同じような意味を持ちながらも違う動物を使って例えられていることはとても興味深いです。この慣用句から、それぞれの言語を使う人にとってどんな動物が身近なものなのかがわかり、環境や生活の違いを感じられます。

では次の英語の慣用句は日本語に訳すと何になるでしょうか?

  • Pull one’s leg

誰かの足をpull(引っ張る)と訳せそうですね。文字通りに訳すと「足を引っ張る」という日本語の慣用句が思い浮かびますね。しかし実際は「からかう」という慣用句になります。(語源についてはっきりとはわかっていませんが、その昔ヴィクトリア朝のロンドンで泥棒が通行人の足を引っ張り強盗したという話からこの慣用句が使われるようになったという説があります。)

日本語の慣用句の「足を引っ張る」は、人の成功や物事の進行の邪魔をするというような意味になるので「からかう」とは異なります。この英語の慣用句の意味を理解していないと、話の流れについていけず、何を言っているの?となってしまいそうですね。またこのような慣用句を翻訳する際にも、意味のずれた訳になってしまうかもしれません。このように日本語と同じように見えるものでも全く意味が異なる慣用句もあるのです。

調べてみると今回挙げたもの以外でも、日本語と英語で同じ意味なのに全く異なる言い回しをしているものや、ほぼ直訳のようなものまで様々なことわざや慣用句がありました。日本語の慣用句を英語に訳してみたり、英語のことわざを日本語にしたらどういう意味になるか考えてみたりすると、表現や文化の違いを発見できるかもしれません。また、英語以外の外国語では何というのか調べてみるのも面白そうです。みなさんも好きな言葉や、知っていることわざや慣用句が他言語では何と言われているのか、調べてみてはいかがでしょうか。

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