デジタル法隆寺宝物館

イデア・インスティテュートでは、取扱説明書など技術系の翻訳を多く行っていますが、美術館や博物館などの説明書きパネルやチラシなどの多言語訳のお仕事も取り扱っています。
そんな関係で、先日、東京国立博物館で開室された「デジタル法隆寺宝物館」の内覧会に参加させていただきました。
「デジタル法隆寺宝物館」は2023年1月31日(火)に東京国立博物館、法隆寺宝物館内にオープンした新たな展示室です。

「デジタル法隆寺宝物館」は法隆寺ゆかりの名宝をデジタルコンテンツや複製で詳しく鑑賞、体験できる展示室です。
今回は法隆寺献納宝物である国宝『聖徳太子絵伝』をテーマに、臨場感あふれるグラフィックパネル(複製)と大型8Kモニターで絵の詳細まで自在に鑑賞できるデジタルコンテンツを展示しています。
また、飛鳥時代に人々を魅了した幻の芸能「伎楽」で用いられた仮面や装束を現代に再現した復元模造も鑑賞することができます。

それでは、「デジタル法隆寺宝物館」内覧会での体験をご紹介しましょう。

まずデジタル法隆寺宝物館の会場に入ってすぐに展示されているのが、聖徳太子絵伝のグラフィックパネルと絵伝の詳細を映し出す大型8Kモニターです。

原寸大グラフィックパネル<聖徳太子絵伝>

「聖徳太子絵伝」はかつて法隆寺の絵殿を飾っていた大画面の障子絵で、聖徳太子の生涯を絵画化した国宝です。10面からなる横長の大画面に、聖徳太子の生涯にわたる50以上もの事績がちりばめられています。長い年月を経て画面の傷みがひどいため、実物の展示は、作品保護の観点から長時間や10面同時に展示することは難しく、暗い室内でガラス越しでしか鑑賞することができません。しかし、今回は複製パネルのため、明るい室内でガラスもなく、作品ギリギリまで近寄って鑑賞することができます。原品の傷み具合や質感などもそのままに複製されているため、歴史を感じますが、長い月日がたった今でも、意外にも絵の具の色がはっきりとしていて鮮やかだったのが印象的でした。さらに、かつて法隆寺に飾られていた時と同じ、コの字型の配置のまま10面同時に展示されているので、当時の雰囲気も感じられます。

デジタルコンテンツ<8Kで文化財国宝聖徳太子絵伝>

また、今回の展示で特徴的なのが、肉眼で見るよりもより詳細に観察できる大型8Kモニターで作品の鑑賞が楽しめる点です。8Kモニターでは作品を見ながら物語の解説を読めるようになっているため、より一層面白さを感じられる展示となっています。
また、展示作品を見ていて「ここをもう少しよく見たいけど小さくて見づらいな…」と思ったときにはその箇所を8Kモニターで拡大してみることができます。1画面で18億画素の画像データがリアルタイムに処理されるため、拡大しても下の画像のように鮮明に見ることができます。綾地や聖徳太子の表情まで確認することができるほどです。

聖徳太子絵伝を初めて見る方だけでなく、よくご存知の方も、これまでの展示ではかなわなかったお気に入りの場面に思う存分近づいて、肉眼では見えない詳細を拡大して見てみたら、新しい発見があるのではないでしょうか。

復元模造伎楽面・伎楽装束について

伎楽は飛鳥時代に大陸から伝来した芸能です。今日では残された資料により役名を伝えるのみとなったため、幻の芸能といわれています。実は聖徳太子絵伝にも伎楽が登場しています。デジタル法隆寺宝物館へ訪れた際にはぜひ確認してみてください。(第5面の中央付近にあります)

今回の1月31日(火)からの展示では、伎楽で唯一の女性面「呉女(ごじょ)」と「裳(も)」と呼ばれるスカートのような伎楽装束の復元模造が見られます。

伎楽面は飛鳥・奈良時代の作で、仮面としては世界最古といえるようです。現存する面に対してX線CT撮影や赤外線撮影など多角的な調査を行い、材質や技法、彩色などを再現しています。実際の素材と同じクスノキに職人が彫刻を施し、細かな線まで手で描くことで、本来の姿を蘇らせています。
原品は法隆寺宝物館<第3室>にて通年鑑賞することができ、実際に原品と見比べるのがおすすめです。原品を見てから復元模造の呉女を見ると、本来はこんなにも色鮮やかだったのかと驚きます。また着色が施されているからか、原品でみるよりもふっくらとしたお顔をしていたのも印象的でした。

裳は面に比べると現在残っている部分が少なく、製作当時の姿を想像するのが難しい状態です。しかし裳も面と同じく原品や資料から、色や形について調査を重ねたことにより、本来の姿が復元されています。当時と同じ天然の草木などで染め上げられ、そしてなんと伝統的な染色技法まで再現しているそうです。再現された裳は、かなりはっきりとした色味で、草木や雲、花の文様が鮮やかで可愛らしかったです。

この復元模造のために様々な方面の職人や研究者が協力されています。ぜひ近くで見て、当時の伎楽の華やかな雰囲気を感じていただきたいです。

イデア・インスティテュートではさまざまな博物館や美術館など、文化・芸術系の翻訳も行っております。あなたが訪れたことのある施設も実はイデアが翻訳を手掛けていたりするかもしれません。
外出規制が落ち着いてきた今、美術館や博物館に足を運んでみるのはいかがでしょうか。
まずはデジタル法隆寺宝物館をぜひお勧めします!

「デジタル法隆寺宝物館」
【期間】 2023年1月31日(火)※以降は通年展示(半年ごとに展示替え)
【時間】 9時30分〜17時
【会場】 東京国立博物館 法隆寺宝物館 中2階(東京都台東区上野公園13-9)
【休館日】

月曜(月曜が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館)
※開館時間・休館日は東京国立博物館総合文化展に準じる。

【料金】 総合文化展観覧料もしくは開催中の特別展観覧料(観覧当日に限る)が必要
【URL】 https://cpcp.nich.go.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=dtl&id=34

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