製品イラストを描いてみる

「イラスト」と聞いて、まず思い浮かべるのは、楽しいイメージのもの、親しみやすいもの、子供のころのお絵描きから始まる好きな漫画やアニメーションのキャラクターなどではないでしょうか。イラストそのものがひとつの文化になりえます。
情報伝達の場においては、図(イラスト)をうまく取り入れることで、読み手にとって堅苦しい印象を排除できる有効な手法にもなります。取扱説明書などでは製品や手順のイラストは必要不可欠ともいえるでしょう。

コロナ禍でご無沙汰しておりましたが、先日久しぶりにお客様の会社を往訪し、打ち合わせのお時間をいただきました。 その中でお客様が、取扱説明書で使用するイラストについて「写真をそのまま使うケースもあるようですが、やはりイラストで描き起こした方がわかりやすいですよね」と仰っていました。
確かに近年の画像データ処理技術の向上、また媒体の多様化、そして低コスト化への対応の面からも、イラストとしては撮影した「実機(もしくは実機サンプル)」の画像データを最低限のレタッチのみ施したもので、取扱説明書内での視覚情報としての役目は果たせるかもしれません。しかしテクニカルイラスト業務に携わる者として、お客様という立場の違う方から、とても貴重な言葉をいただいたと思いました。
当然ですが、写真だと形状の描写はより正確です。しかし取扱説明書のように「正しい使用方法をわかりやすく伝達する」ための手段としては、写真そのままでは視覚的に情報量が多くなってしまい、説明したいものが不明瞭になってしまいます。イラストでは説明したい部分を強調して表現(デフォルメ)することができるので必要な情報を伝えやすくなります。また紙面(画面)上のレイアウト・デザインの統一化も計ることができます。

製品イラストはじっくり描き起こす充実感を得られるという魅力があります。その一方で、テクニカルイラストレーション業界をとりまく現状として、3D CADデータの幅広い活用を目的としたソリューションの開発など、別のアプローチとして注視しなければならない技術もあります。ただし、この分野は専門オペレーターの育成、導入コストなどの問題等、まだ高い壁はありそうです。
そこで、今回はパソコンで製品イラスト(立体図)を描いてみたいと思ったときに、ひとつのヒントになればと思い、立体図の描き方の基本を紹介したいと思います。(Illustratorなどのソフトに特化したツールの使いこなしなどの情報は、Web上に数多くあるのでここでは取り上げません。) 

まず立体図(製品)の形状をよく観察します。さらに部品や可動部、質感などもよく観察します。

立体図を描くには常に奥行きを仮想する必要があります。観察している立体図は、上から見た図、正面から見た図、右側面から見た図の3面が見えます。ここで製図の基本、3面図をイメージします。

目に見える立体図は、見る角度によってこの3面が規則的に変形して見えています。その規則というのは3方向の軸に沿って成り立つものだということがわかります。

製品イラストを描くとき、この3つの軸を対象物に重ねて見ていくことを「アタリをつける」といいます。

そのアタリに従うことによって、各パーツも不自然でない立体図を描くことができます。製品イラストの多くはパーツを組み合わせることによって完成します。自然な仕上がりにするためには、イラスト作成過程でこのアタリをイメージして、正確に再現することを心がけます。

この方法を用いれば、デッサンに自信がなくても、パソコンと専用アプリがあれば短時間でさまざまなイラストを仕上げることができます。製品イラストに限らずカットイラストなど、立体的なイラストを自然な仕上がりにするためのコツとして参考にしていただければ幸いです。

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