「InDesign」と「FrameMaker」の違い

それぞれ「インデザイン」(以降「ID」)、「フレームメーカー」(以降「FM」)と呼ばれるこの2つは、印刷関係にお勤めの方にはおなじみのアドビ社製2大レイアウトソフトです。主に印刷物の紙面をパソコン上で構成していく際に用いられるソフトです。

一昔前は非常に高価であったため、ほぼ専門の方々にしか用いられていませんでしたが、最近ではこれらのソフトを提供するアドビ社によるユーザー拡大路線の影響で、購入価格も比較的低く抑えられ、いわゆる学生や一般の方々の間でも使用される機会が増えているように感じられます。

当社は翻訳会社ではありますが、専門のDTP部門も有しており、日々多くの印刷案件についてもご相談をいただいております。お客様の中には、これらのソフトを導入したいのだけれどいまいち違いが分からない、といった疑問をお持ちの方が多く見受けられます。今回はそれぞれのソフトについて、最低限抑えておくべき違いをいくつかご紹介したいと思います。

1.読み方向の制限

一定の条件は伴うものの、「ID」は基本的に読み方向に制限はありません。縦書き、横書き、さらにはアラビア語などの右から左に読む言語についても対応しています。一方、「FM」は左から右への横書きのみに対応しています(一部、表などになっている文字列を物理的に回転させることで多少読み方向を変えることは出来ます)。

2.扱える言語

最新のバージョンでは、「ID」、「FM」ともに、言語に対応したフォントさえあれば理論上はどんな言語でも対応出来るようです。ただ、1.でご紹介したように、「FM」ではアラビア語などの右から左に読む言語については対応していませんし、「理論上」と申し上げたとおり、フォントやOS環境などとの相性もあるため、フォントを用意しても必ずしもご希望の言語を扱える訳ではありません。こういったケースは「FM」の方によく見られるため、一般的には「ID」の方が扱える言語は多い、と思っていただいていいと思います。

※2015年6月アドビ社よりフレームメーカーのアラビア語対応が発表されました。
Adobe FrameMaker(2015リリース)

 

3.文字組みやレイアウトの自由度

「ID」では実に様々な文字組み設定を行うことが出来ます。文字組みとは、文字列同士を調整していかにバランスよく、美しく見せるかということですが、例えば日本語などでは、漢字、カタカナ、ひらがな、アルファベットなどが混在しうるため、それらのバランス良く組み合わせて見せることが要求されます。「FM」でも文字間など多少の調整は可能ですが、この点においては「ID」の圧勝と言っていいと思います。

レイアウトの自由度についても同様で、乱暴な言い方をすれば、「ID」はほぼ思いつくままに文字や画像を配置することが出来ます。高度な描画機能も備わっているため、簡単なイラストなら「ID」上で作成出来てしまいます。一方、「FM」には簡便な描画機能しかなく、文字や画像の配置には一定の作法が存在するため、それほど自由度が高いとは言えません。

4.「FM」のメリット

1.から3.まで読んでいただいた方は、「では「FM」を使う理由がないのでは?」と思われるかもしれません。高度なデザインや自由なレイアウトが求められる制作物に関してはある意味その通りなのですが、いわゆる取扱説明書のような、ある程度絞り込んだデザインと限定されたレイアウトによる大量ページの制作物において「FM」はその本領を発揮します。「FM」はその名が示すように、ある固定されたレイアウト枠に文字や画像、イラストを入れ込んで紙面を作り上げていくソフトなのですが、ページ間の関連項目を相互に参照させる仕組み((例)「xページを見てください」)や、目次や索引といった検索にかかせない仕組み、簡単にはレイアウトに変更を加えられないような、文書に統一性を持たせる仕組みが数多く備わっています。

「ID」にも同様の機能が備わってはいますが、特に重要な相互参照と索引機能については圧倒的に「FM」の方が管理しやすくなっています。また「ID」はその自由度の高さのため、取扱説明書のような大量ページの制作物を扱う場合、細心の注意を払っておかないと、いつのまにかページ間で体裁にバラつきが生じてしまうといったことが起きることが少なくありません。

ここまで「ID」と「FM」について主な違いをご紹介してきましたが、目安としましては、
少数ページ、高度なデザインと自由なレイアウトが要求される制作物なら「ID」、
大量ページ、限定されたデザインと一貫したレイアウトが要求される制作物なら「FM」、
ということでお考えいただければと思います。

当社では両ソフトの長所・短所に関わらず、多種多様な制作物を扱っております。特に多言語の取扱説明書の制作に関しては数多くの実績を有しておりますので、何なりとお気軽にお問い合わせください。

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