個人的ひらがなの魅力

私は子供の頃ひらがな図鑑に夢中になっていました。
ひらがなを、単語や文章を構成するための「文字」と認識する前に「形体」として興味を持っていました。
さまざまなひらがなの形を目にすることで、その不思議なラインや曲線に惹きつけられ、吸い込まれるような感覚になっていた記憶もあります。

一筆書きできる簡単な形のもの、

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線が急カーブを描いて交差するもの、

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点と線のバランスが絶妙なもの、

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そのユニークな形体に魅了されていました。
ひとつひとつのひらがなはその独特な形から、何かしらの意味を発しているように見えてきて、まるで生きているかのように感じられることがありました。

文字を書くことにもすぐ親しみましたが、文章を書いて誰かに何かを伝えることが目的ではなく、文字そのものの美しさや形状を変わらず楽しむような感覚でした。

学生時代にはレタリングという技術を生かした仕事にも直結するということを知り、一時期専門的に学びました。現在の仕事で直接役立つことはありませんが、レタリングの基本をアナログ作業で学べたことで、今でも様々な言語の文字(全く読めなくても)やフォントに対する興味は尽きていません。

ここ数年のレトロブームを背景に、昭和デザイン風のフォントが数多くデジタル化されています。
レトロなフォントは手書き風や活版印刷風のものが多く、デジタルフォントにありがちな無機質さが少なく、またそのデザインにもクセがある場合が多いです。
それらは個性的で記憶に残りやすく、「文字」というアートを肌で感じている気分にさせてくれます。
そんなレトロなデザインの文字を見かけると、ひらがな文字に夢中になっていた幼少期をくりかえし思い出します。

 

最近特に目を引いたのは、「機械彫刻用標準書体」というフォントです。これはフリーフォントとして現在ベータ版が公開されてます。

日本産業規格(JIS)に定められた書体で、主に公共の場で注意を促す用途として使用されているのをよく見かけます。機械彫刻技術を再現して、その特性上すべての文字は一定の線幅で統一されており、独特な機能美を持っています。
現在ではユニバーサルデザインに則したゴシック系の書体やイラスト、ピクトグラム等を用いた案内表示が主流になりつつあるため、今この書体を見かけるのはやや築年数の古い施設や長期間使われているような案内板などに多いように感じますが、デジタルフォント化という形で残されているということを知り、とてもうれしくなりました。

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