育児に男女は関係ない ~育休を取って初めて気づく男女の差~

イデア・インスティテュートには、育児をしながら働いている人が多くいます。男性の育児休業取得も決して珍しくはありません。「子供の発熱で急に休まないと」というときにも、肩身が狭くなるようなこともありません。イデアは「育児をしながら働きやすい職場」と言ってよいと思います。

今回は、私自身が父親として1年超の育児休業を取得したことで初めて気が付いた『こうだったらいいのに』という点がありましたのでご紹介したいと思います。

「育児・介護休業法」に男女の区別はない

育児休業制度は、「育児・介護休業法」で保障された制度です。育児や介護を行う労働者が仕事と家庭を両立できるように、そして働き続けられるようにと制定された法律です。
この「育児・介護休業法」の条文には男女の区別はまったくありません。つまり、父親も母親も全く同じ育休制度を利用することができるのです。
(にもかかわらず、日本全体では男女で育休の取得率・取得期間には大きな差があります。統計的に見ても、女性のほうが取得率が高く、期間も著しく長いのが現実です。)

でも実際は男女で差があった

さて、私は1年超の育休を取得した男性なのですが、ある一つの点で男女の制度に大きな差があることに気が付きました。そしてそれは、育休だけでなくその後の育児参画にも大きく影響を与えているような気がしてならないのです。その決定的な差とは・・・。
「父親は出生前には休業に入れない」ということです。

母親は、育児休業とは別に「労働基準法」を根拠とした「産前・産後休業制度」があります。産前休業は、出産予定日の6週前から休業できる制度です。取得は任意で、日本全体ではおおむね4週間~6週間の取得が多いようです。そして、産前休業は「出産予定日」を基準とするため、数か月も前からあらかじめ雇用者側と日程を取り決めることができます。産前・産後休業を経てそのまま育児休業に入るケースが一般的です。
一方で父親は、現行の「育児・介護休業法」では出生前に計画的に休業に入ることができません。
実際の出産が出産予定日より遅れた場合は、産まれていなくても出産予定日から育児休業を開始できますが、その場合でも出産予定日になってみないと分からない、ということになります。
「出生前に休業に入れる母親」と、「産まれないと休業に入れない父親」。
「数か月前から休業日程を計画できる母親」と、「産まれるまで休業日程が決まらない父親」。
この差は、後々まで家庭内での役割分担に影響を与え続けるような気がするのです。

もしも「出生前育児休業」があったなら

仮に、子どもが生まれる前 ― たとえば出産予定日の4週前とか ― から父親も休業に入れるとしたら、どんないいことがあるでしょう。
子どもが生まれる前にも、親としてやることはいくらでもあります。オムツを用意したり、ベビー服を選んだり、ベビーベッドを組み立てたり、家具の配置を変えたり・・・。そういうことを通じて「だんだん父親になってゆく」のではないかと思うのです。
そして何より母親は臨月です。いつ産まれてもおかしくない状態です。大きなお腹では日常の買い物だって大変でしょう。すでに上の子がいれば、その世話もあります。破水や陣痛が来ても、父親が家にいてくれたらどんなに心強いでしょうか。

「出生前育児休業」は雇用者にもメリットがある

雇用者側から見れば、出生前から労働力が減ってしまうのは痛手かもしれません。でも育休を取るつもりの父親は、出生後はどのみち休業に入ります。もしも予定日より早く産まれれば、想定より早く育休に入ることだって充分あり得るのです。だったら出生前に休業に入ったとしても、そのこと自体が新たなデメリットにはならないのではないかと思うのです。むしろ、数か月前から休業日程を計画できるほうが雇用者側も人員や仕事を調整しやすいのではないでしょうか。
私自身、育休に入る前、出産予定日の3週くらい前から「明日から育休で勤務できないかも」と思って仕事をしていました。このことは自分にとっても大変なストレスでしたが、会社や同僚にとっても一緒に仕事をしづらい社員だったかもしれません。
あらかじめ計画的に休業日程を立てられることは、従業員にとっても雇用者にとっても大きなメリットだと思います。

育休を取ってみないと分からない

ある調査によると、日本での自然分娩の割合は7割超、そのうち出産予定日より早く産まれるのは5割超です。単純に計算して、子の誕生の3割~4割のケースで「父親の育休開始可能日はその日になるまで分からない」ということになります。
これは行政が掲げる「父親の育休取得促進」にもネガティブな影響を与えそうです。
ジェンダーロールの押し付けや固定化、男女の賃金格差、家庭内交渉力の差など、さまざまなジェンダー格差の課題を少しずつでも解消していくための小さなアイデアとして、そして子育てに邁進しようとする全国の働く父親・母親のために、ぜひ「出生前育児休業」という制度が検討されてほしいなと個人的には思っています。

この「出生前育児休業」は個人の小さな思い付きにすぎませんが、これも育休を取ってみて初めて気が付いたことです。ほかにも育休中に気が付いたこと、経験したことはたくさんありますが、それはまた別の機会に。

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