
竹内まりやさんの「人生の扉」のサビの歌詞は英語で書かれています。
人生の重要な局面や変化を迎える瞬間を描いた歌で、20歳になることをfun、30歳になることをgreat、40歳になることをlovelyというように、過ぎる時と共に年齢を重ねてきた人生を振り返っています。
当時51歳になられた竹内さんは、50歳になることをniceと表現されました。
もしこの英語部分を日本語に翻訳して欲しいと言われたら皆さんはどう訳すでしょうか。
とても簡単だと思うでしょうか?
例えばniceは素晴らしい・良いという意味を持ち、シンプルにポジティブな表現です。これをそのまま訳に当てはめるのであれば、仮に十人が翻訳したとしてもすべて同じ訳になるのでは、と思うかもしれません。
ですが実際は十通りの訳が出てくる可能性があります。なぜなら単語の意味を調べて言葉を置き換えることはできますが、人によって意味の捉え方が異なることに加え、同じ言葉でも訳す人によって翻訳結果が大きく変わってきます。
これと正反対の「十人一訳」がイデアの仕事です。
例えば取扱説明書は原文と完全に同じ内容が保証される必要があり、不足も補足もしてはなりません。正確さが一番に求められます。
また、特にゲームのシナリオやセリフの翻訳などのエンターテインメント分野においては、翻訳者による技量や個性が翻訳に自由を与えやすいため実際には一訳ではないのですが、原文の意味を正しく捉え、翻訳された言語で適切に表現されたものとなっているかというゴールは一つです。
「人生の扉」のサビが英語で書かれている理由については断定することはできませんが、あえて日本語を使用しないことで、リスナーそれぞれが自身の過去を振り返り、未来を想像する機会をつくったのではないでしょうか。
歌の後半のサビは60歳、70歳、80歳、最後は90歳へとつながりますが、自分自身がその年齢を迎えた時、またこの歌をあらためて聴いてみたいなと思います。
日々の業務で翻訳の難しさ・繊細さを認識しながらも、受け手の自由な解釈を促すことができる言葉の魅力も忘れないようにしたいと感じます。
きっと今の自分から出る訳と将来の訳も全く違うのだろうなぁ…。
最後まで記事をご覧いただき、ありがとうございます。
株式会社イデア・インスティテュートでは、世界各国語(80カ国語以上)の翻訳、編集を中心に
企画・デザイン、通訳等の業務を行っています。
翻訳のご依頼、お問わせはフォームよりお願いいたします。
お急ぎの場合は03-3446-8660までご連絡ください。