皆様のご自宅に「広辞苑」はありますか?
広辞苑といえば、言わずと知れた日本を代表する辞典です。1955年に言語学者の新村出(しんむら・いずる)によって第一版が刊行され、その後も改訂を重ね続け2023年11月現在では第七版が出版されています。出版元の岩波書店の公式サイトにも紹介されている通り、「国語+百科」辞典の最高峰であり、「国民的辞典」として広く認知されています。
広辞苑は改訂される度に項目や語義・イラストの追加、見出し語の仮名遣い(例えば「おうかみ(狼)」から「おおかみ」)や送り仮名の調整、固有名詞(例えば「国鉄」から「JR」)の変更等が加わっており、ニュースでも取り上げられたりします。第七版では日本語として定着した言葉、または定着すると考えられる言葉を厳選して一万項目が追加されたとのことです。現代の日本語だけでなく古語の項目も充実しており、派生した意味を古い順に解説しているのも広辞苑の国語辞典としての大きな特徴になります。
また、広辞苑は国語辞典としてだけではなく、百科事典としても活用できます。各分野の項目は第一線の専門家が執筆・全面的に校閲されているそうで、その分野は「文学・歴史から物理学・医学、美術・音楽に武芸・茶道、スポーツ・サブカルチャーまで」多岐に渡っています(『広辞苑 第七版』特色 – 岩波書店 (iwanami.co.jp))。最新の学説や動向を反映し、都度解説を修正したり、新たな項目を選定・追加したりしているそうです。
筆者は高校時代にこうした広辞苑の魅力に気が付き、一時期読みふけっていました。読書をしていて知らない言葉の意味を調べるのは勿論のこと、それ以外の用途でも広辞苑を頻繁に使用していました。筆者はこの使用方法を「ネットサーフィン」ならぬ「広辞苑サーフィン」と呼んでいました。現在でも「広辞苑サーフィン」は家で時々行っています。具体的にどの様に広辞苑を使用していたのか、以下で説明します。
まず、自分の興味のある単語を引いて説明を読んでみる、ということをしていました。広辞苑の解説はいずれも実に要点を押さえた簡潔なもので、限られたスペースでも必要最低限の情報が得られます。ただし、時には使い方に注意が必要です。筆者はディケンズの『二都物語』を読んでいる最中に広辞苑でその項目を調べたところ、解説に重要なネタバレが盛り込まれていたため、すっかり続きを読む気が失せてしまったことがあります(笑)
また、探していた単語の近くで気になった項目があればそれもついでに読んでみたり、適当にパラパラとページをめくって気になった項目を見てみたり、イラストがあればそれも楽しみつつその項目を読んでみるということもしていました。広辞苑のイラストは公式サイトの説明にもある通り、「写真以上に、その事物の特徴を抽象化して分かりやすく示すことができる」線画で、独特の味わいがあります。特に筆者のお気に入りは「まんぼう」です。気になった方は広辞苑で探してみてください!
筆者は大学時代、フランス語の教授から「言葉を覚えるのに役立つから、出来るだけ紙の辞書を使用するようにしなさい。」と言われたことが印象に残っています。近頃はスマホや電子辞書などで単語を調べる方が手軽で利便性が高いこともあり、紙の辞書を活用する機会は大幅に減っているように思います。語彙力を増やすという目的でもそうですが、昔ながらの紙の辞書で言葉を引く「広辞苑サーフィン」の楽しみも時には味わって頂けたらと思います。
参考資料
岩波書店「『広辞苑 第七版』 – 岩波書店」http://kojien.iwanami.co.jp/(参照 2023年10月25日)
新村出編『広辞苑 第七版』岩波書店、2020年
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