アラビア語は、中東・北アフリカの広い地域にわたって話されていることばですが、何か国で使われているかご存知ですか? 実に、27もの国で公用語とされています。そして、その話者の多さから、国連の6つの公用語のひとつにもなっています。
もちろん、それだけ広い地域で公用語とされていることばですから、その地域差は、特に口語において顕著にみられます。この口語(アーンミーヤ)の方言による違いは、語彙・発音・文法にまでわたり、私たちからすれば、時にとても同じ言語とは思えないほどです。アラビア語を母国語としている人たち同士でさえ、互いの意思疎通が難しい場合もあります。
一方、昔から地域や時代に関係なく、アラブの国々で統一して使われているのが、正則アラビア語(フスハー)です。このフスハーは、イスラーム教の聖典であるコーランを記すのに使われていることばで、アラビア語の書き言葉として、コーランが成立した時代から基本的には大きく変わることなく用いられ続けています。現代でも、印刷物、読み物、公の場での会話や報道などで使用されています。このフスハーが時代や地域を経るにつれ、それぞれの方言を持つアーンミーヤになっていったため、フスハーとアーンミーヤの間にも大きな違いがありますが、アーンミーヤはあくまでも口語として、文字で書き記すことは一般的ではありません。アラブの人々にとって、日常会話はアーンミーヤ、読み書きはフスハーという使い分けが自然となされていることになります。
翻訳は書き言葉になりますので、当然フスハーが使われます。フスハーを使用する限りアラビア語の地域差を心配する必要はありません。
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