イタリアの甘いもの事情

最近のコンビニはさまざまな国のスイーツを紹介してくれる場になっています。話題のマリトッツォ(Maritozzo)もその一つ。これはイタリアのローマに古くから伝わるお菓子だそうです。柔らかく少し甘味のあるパンの間にホイップした生クリームをたっぷり挟んだものです。見た目のインパクトだけでなく、素朴でシンプルな味わいが人気の秘密かもしれません。名前の由来はイタリア語で「夫(おっと)」を意味するmaritoという言葉のようですが、私は諸説ある由来のうち、3月の第一金曜日に男性が婚約者にマリトッツォに指輪を入れて贈ったという説が「さすがイタリア人」、という感じがして気に入っています。

さて、日本でイタリアのスイーツの元祖といえば、ティラミス(Tiramisù)でしょうか?定番中の定番ですが簡単に説明すると、コーヒーをしみ込ませたスポンジ状の層とマスカルポーネチーズを何層か重ねて、最後にココアパウダーをかけたデザートです。元は北イタリアのスイーツで、イタリア全土に広がって今ではほとんどの地方で食べられているデザートです。

それではティラミスによく似たズッパ・イングレーゼ(Zuppa inglese)というイタリアでは全国区のスイーツはご存知でしょうか。ティラミスと同じビスコッティ・サヴォイアルディ(Biscotti savoiardi)というフィンガービスケットを、ピンクのシロップに浸し、カスタードクリームと重ねた、ティラミスの茶色の部分をピンクにしたような見た目のデザートです。鮮やかなピンク色の見た目に騙されますが、アルケルメス(Alchermes)というアルコール度数が約30度の赤いリキュールでびしょびしょに浸されたビスケットをカスタードクリームと一緒にスプーンですくって食べるスイーツです。ジェラート(Gelato)の味にもズッパ・イングレーゼ味をみかけるほどイタリアでは人気があります。ズッパ・イングレーゼという名前は「イギリス風(inglese)スープ(zuppa)」とういう意味です。不思議な名前の由来は諸説あるようですが、イギリスの「トライフル」というスポンジやイチゴ、カスタードクリームがグラスに入れられたデザートがアレンジされたからではないか、という説があり、見た目も近いから私はこの説が有力ではないかと思っています。ティラミスもマルサラ酒(Vino Marsala)を使うのが一般的なので、イタリアのスイーツは大人が楽しむデザートでもありますね。

デザートといえば、果物の食べ方も日本とは少し違うかもしれません。例えばイチゴにミルクをかける日本人に対してイタリア人はレモン汁と砂糖をかけます。フラーゴレ・アル・リモーネ(Fragole al limone)、その名の通りイチゴのレモン風味としてレストランのメニューにあります。マチェドニア(Macedonia)というワインやシロップに果物の切ったものを漬け込んで食べるデザートもあります。

また、イタリアでは朝食にも甘いものを食べます。普段、家で簡単に済ませる場合は大人も子供も市販のビスケットを温めた牛乳やカフェ・ラテ(Caffellatte)に浸して柔らかくして食べたりします。スーパーでは大きな袋詰めされたビスケットがよく売られています。通勤の途中で行きつけのバール(Barはお酒だけでなくコーヒーや軽食も食べるところ)に寄って朝食をとる人も多いです。ここでも甘い菓子パン(これもパスタ(Pasta)と言います)が置かれています。定番としてどこの店にも置いてあるのがコルネット(Cornetto)で、見た目はクロワッサンと変わらないのに甘いので、だまされないように。中にベリー系のジャムが入っているものもあります。前述のマリトッツォも朝食に食べる人が多いそうですが、私のおすすめは、グラニュー糖をまぶした揚げパンの中にカスタードクリームを詰めたその名も「爆弾」という意味のボンバ(BombaまたはBomboloneとも言います)という菓子パンです。名前の由来はおそらくその丸い見た目からかと思いますが定かではありません。このような菓子パンなどスイーツを専門に売っている店はパスティッチェリーア(Pasticceria)といい、食事用の甘くないパン(パーネPane)は日本語ではパン屋を意味するパニフィーチョ(Panificio)とかフォルナーイオ(Fornaio)で売られます。

イタリア人は、エスプレッソ(Espresso、ちなみにCaffèといえばエスプレッソのこと)にもカフェ・ラテにも砂糖を入れますし、男女問わず甘いもの好きが多いのでしょう。なじみの店員にいつもと同じ注文をし、顔見知りの客同士でおしゃべりをしたり、一人静かにカップッチーノ(Cappuccino)を飲みながら新聞を広げたり。思い思いの朝の過ごし方が見られるので、旅行でイタリアに行かれたらぜひバールでイタリア式朝食を楽しんでみてください。そしてランチやディナーでは大人のデザートも味わってみてはいかがでしょうか。

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