中国のネット流行語

インターネットの普及と進化に伴い、皆さんが耳にしたことがある「ktkr」、「ググる」、「草」といった日本独自のネット流行語が数多く生まれました。同じく、中国にもその文化と社会情勢を反映したネット流行語が多く存在しています。今回は中国のネット流行語について紹介したいと思います。

中国のインターネットの発展は大きく3つの段階、黎明期(1990年代後半~2000年代初め)、発展期(2000年代中頃~2010年代初め)、成熟・多様化期(2010年代中頃~現在)に分けられます。それぞれの時期を反映するように、様々な言葉が生まれました。

(1) 黎明期:1990年代後半~2000年代初頭

中国でインターネット思考が芽生え始めたのは1980年代後半です。1994年4月20日に、国際専用線(64kbps)でインターネットに直接接続することが可能になって、中国における商用インターネットが本格的に始まりました。この頃のネットは、パソコンを使ってダイヤルアップ接続でBBS(電子掲示板)やチャットルームにアクセスするのが主流でした。

この黎明期には、漢字入力の不便さから、ピンインの頭文字を取った略語や、数字を使った暗号のような言葉が生まれ始めました。

代表例:
886 (bā bā liù):「バイバイ」という意味の言葉「拜拜了 (bái bái le)」を表す言葉。数字の「88」の発音が「バイバイ」に似ていることから来ています。
この頃、中国にいる友達からのメッセージの最後に、よく「886」と書いてありました。最初は全く意味がわからず、メッセージの最後に付けてくれたことと発音からだんだんそれが「バイバイ」という意味であることがわかってきた記憶があります。

(2) 発展期:2000年代中頃~2010年代初頭

2000年代中頃に、インスタントメッセンジャー「QQ」が爆発的に普及して、若い人たちのネット上でのコミュニケーションがとても活発になりました。ネット流行語は一部の人の間だけではなく、より多くの人たちに使われるようになりました。

この時期は、ただの略語だけでなく、社会現象を反映したり、感情を表したりする言葉が増えました。

代表例:
・宅男/宅女 (zhái nán/zhái nǚ): 日本の「オタク」文化に影響されて生まれた言葉で、家で過ごすことが好きで、特定の趣味に没頭する人を指します。

(3) 成熟・多様化期:2010年代中頃~現在

スマートフォンの普及に伴い、Weibo(微博)やWeChat(微信)、Douyin(抖音)といったSNSが人々の生活に深く浸透しました。これらの登場により、中国のネット用語は種類が爆発的に増え、すごいスピードで新しい言葉が次々と生まれています。

この時期の一番の特徴は、「梗 (gěng)」(ミーム)がたくさん出てきたことです。特定の画像、動画、フレーズがネット上で次々と真似されて、拡散されることで、それ自体が一種の「共通言語」のように使われるようになりました。

代表例:
躺平 (tǎng píng):「寝そべる」という意味で、頑張りすぎず、ゆったりと生活するライフスタイルを指す言葉として、特に若い人たちの間で共感を呼んでいます。

インターネット技術の発展により、ネット流行語は社会の移り変わりや人々の気持ち、そして若者文化の多様性を表してきました。以下に、中国のネット流行語をいくつか挙げます。それぞれの言葉が生まれた理由を知ることで、中国をもっと面白く理解していただけたらと思います。

流行語

意味

由来

显眼包

(xiǎn yǎn bāo)

個性的で面白い人、目立つ人

元々は「目立ちたがり屋」を指していたが、最近は独特の面白さで注目を集める人などに対して使われる。

city不city

(city bù city)

都会的でモダンな雰囲気があるか?オシャレか?

外国人の動画で使われた中国語と英語が混じった表現がきっかけで、真似する人が増えて広まった。

班味

(bān wèi)

会社疲れ、仕事疲れ

「班(会社、職場)」と「味(におい、雰囲気)」を組み合わせた言葉で、仕事のストレスや疲労感を表す。

硬控

(yìng kòng)

相手を完全に無力化する強力な行動制限スキル。または、圧倒的な魅力や実力で、人を魅了・支配すること

元々はゲームの専門用語。強い力や魅力によって、相手を意のままに動かしたり、完全に引きつけたりする意味を持つ言葉。

松弛感

(sōng chí gǎn)

リラックス感、余裕感、肩の力が抜けた雰囲気

ある家族が旅行中に飛行機に搭乗できなくなり、預けた荷物も戻ってきたトラブルにあったにもかかわらず、みんな穏やかに対応した様子を見たブロガーが「松弛的家庭关系」(ゆとりのある家族関係)と表現したことから生まれた言葉である。2024年のパリオリンピックで、中国の2000年以降に生まれた選手たちがプレッシャーに負けず、自信に満ちた姿を見せた時に「松弛感」が使われて、さらに広く認知された。

小孩哥

(xiǎo hái gē)」/小孩姐(xiǎo hái jiě)

若いにもかかわらず、非凡な才能を持ち、大人も顔負けする子供

あるショート動画で、男の子が大人びた言葉遣いをして、また大人であるかのような表情を見せたことで生まれた言葉である。「哥」(兄貴)や「姐」(姉貴)は尊敬できる人、親しい人に対してよく使われる言葉で、子供でありながら、その年齢以上の才能を持つ子供を指す。

银发力量

(yín fā lì liàng)

シルバーパワー

高齢化社会の到来で、高齢者が社会の様々な分野で発揮する、無視できない影響力や力を指す言葉。

数智化

(shù zhì huà)

デジタル化とスマート化の融合

デジタル技術とAIを融合させ、業務やビジネス、社会システム全体をより高度に、効率的に、そして自律的に進化させていくことを指す。

水灵灵的XXX

(shuǐ líng líng de XXX)

行動が活気に満ちている状態。

他者または自分を皮肉る。

韓国のアイドルが使ったことで広まった言葉。XXXの部分には動詞や状況が入る。

内卷

(nèi juǎn)

非合理的な内部競争

人口の多さとそれに伴う競争の激しさ、それによって生じる社会的なストレスを表現した言葉。

 

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