英語学習とランニング

翻訳会社で働くほとんどの人は「語学の面白さ」を知っているはずだ。
それは何よりも「やった分だけ伸びる」ということ。単語の暗記でボキャブラリーを増やし、文法、構文、慣用句を覚え、映画やニュースを見たり、外国の人と実際に話してみたりすることでリーディング力、ライティング力、リスニング力、そしてスピーキング力を高めてきた人がほとんどではないかと思う。幼少期をアメリカなど英語を母国語とする国で過ごした人は自然に言葉を覚えるので、そういった意味では、少なくとも私はそれを「語学」とは思わない。私たちが「日本語を学んだ」と言わないのと同じだ。語学は努力が必要だ。

高校の頃私は英語をあまり勉強しなかったが、大学に受かり、経緯は忘れたが「英語をやってみよう」と思いイギリスに留学した。イギリスを選んだのはアメリカやオーストラリアの生活は想像がついたが、イギリスの生活はまったく想像がつかなかったからだ。敢えてそういう環境に自分の身を置くことで、日本人とつるむことなくストイックに英語を学べる、そう考えたのは覚えている。実質1年余りの滞在では勉強よりパブで遊んでいる方が多かったが、イギリスは地理的に他のヨーロッパ諸国からの短期留学生が多く、ホームステイ先でのホームメイトもころころ変わり面白かった。
異国の人とも英語を通じて意思疎通が出来る。その楽しさを覚え、本格的に英語を勉強し始めたのは帰国してからだった。帰国後すぐにTOEICを受けたら思わぬ高得点だったのでこれはいけると思い、毎日Japan Timesを1面から国際面(5面)まで読み、多くの小説を読んだ。『The Lord of the Rings(邦題『指輪物語』)』の出だしはサッパリ分からず面食らったのをよく覚えている。分からなかった単語はホワイトボードに書いて覚えていった。ボキャブラリーを増やすことは土台を大きくすることだ。読めない単語は、書けないし、聞き取れないし、当然話せない。リーディングだけではダメなのでNHKの19時のニュースは毎日英語で聞いた。ライティングはイギリスで知り合った友人たちとメールのやり取りをすることで文章を工夫することを覚えた。スピーキングはアパートの壁に誰かいると仮定して一人で壁と英語で会話していた。相手の発する会話を自分の中で想像し、それに自分が答えるというようなことだ。シャドーボクシングに似ている。ただ、受験勉強とは全く違う勉強の仕方なので、「関係代名詞」とか言われても未だにピンとこない。それでも学生時代にやった分だけ伸びた自分は25年後の今、イデア・インスティテュートで英語のプロとして働いている。

同じようなことが、一部のスポーツにも言えると思う。どのスポーツも練習すればある程度うまくなるだろうが、それでもバレーボールやバスケットボールは身長が必要だし、サッカーや野球は上達するのにそれなりのセンスのようなものが求められると思う。そういった意味での「限界」の存在を比較的薄く感じるのはランニングだ。自分は小学校ではサッカー部、中学ではバレーボール部、高校では陸上部に所属したのでなんとなくそう感じる。走るのは苦手という人もいるだろうし、ランニングが万人に向いているとは思わないが、ゆっくりの「ジョギング」を最初は1キロしか走れなくても、週に2日程度でも続けていれば走れる距離は長くなり、速くもなる。それが週3日になればさらに長く、速く走れるようになるだろう。走った分だけ伸びるというのはやった分だけ伸びる語学に似ている。ゆっくり走るジョギングはランニングの基本だが、英語のボキャブラリーを増やすことに似ている。そして英語に「リーディング力」「ライティング力」「リスニング力」「スピーキング力」があるように、ランニングにもジョギング以外に「持久力」「スピード」「瞬発力」などを高める様々な練習があり、それらを総合して「走力」と呼ぶらしい。素人なので詳しい理論は分からないが、走り始めはどんどん速くなる。高校以来、走ることを再開して4年ほどになるが、3年前の初マラソンで思いのほかいいタイムでフィニッシュし、2年前、東京マラソンに当選した後は熱に浮かれたように走った。色々な練習会に参加してはジョギング以外の様々な練習をこなした。心肺と脚を追い込む苦しい思いも沢山したが、その分10キロレースや、ハーフマラソンでは走る度に自己ベストを更新していった。そして東京マラソンで目標タイムを切ってゴールできた。この過程も自分がTOEICでどんどんスコアを伸ばし、英検に合格した過程によく似ている。

英語もランニングも夢中になった時期があるが、今、この瞬間に当時と同じような憑りつかれたような向上心とモチベーションがあるかというと正直ない。そのことに焦った時期もあったが、今となってはそれも悪いことではなく、そういう時期が過ぎただけだと思える。上昇していく時間は過ぎて、今は平坦な道を進んでいる、そんな感じだ。
英語とランニング、これからもゆっくりと大事にしていきたいと思う。

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