静岡とお茶にまつわる話

 先日地元の静岡に帰省して県内をドライブしていた時、あちこちで茶畑を見かけました。富士山を背景に青々とした茶畝が並ぶ風景はいかにも静岡らしく、最近はトップだったお茶の生産量をついに他県に抜かれるというニュースを耳にしながらも、やはり静岡といえばお茶だなぁと思いました。何年か前の冬に撮った写真を載せつつ、今回は静岡とお茶にまつわる話をしたいと思います。

  「みるい」という言葉を聞いたことはありますか?これは、若い、柔らかい、みずみずしいなどの意味を持つ静岡の方言で、お茶の新芽の状態を形容するときに使われます。「みるい茶葉を厳選しました」などの宣伝文句とともにお茶が売られていたりします。新芽の中でも特に柔らかい芽を指す「みる芽」、みる芽で作られたお茶を指す「みる芽茶」などの言葉は「みるい」に由来し、今ではお茶業界の用語として全国的にも使用されています。とは言っても、「みるい」はお茶以外に対しても同様の意味で、世代差こそあれ日常的に使われます。私が子どもの頃よく祖父や両親が、庭の木から新芽が顔を出せば「みるい葉っぱが出てきた」とか、レタスやサヤエンドウなどの野菜を食べては「みるくておいしい」などと言っていました。30代の私は「みるい」を口に出して使うことはないもののその言葉が持つイメージははっきりと頭にあり、なんとなく水分量の多そうな響きからも柔らかな緑のみずみずしさを表現するのに確かにぴったりだと思っているので、静岡を離れて15年以上経つ今でも特に新緑の季節にはよく心に浮かぶ言葉です。

 さて、話は変わって、お茶といえば有名な茶摘みの歌で「夏も近づく八十八夜」と歌われますよね。八十八夜って一体なに?と思う方も多いと思いますが、これは主に農業に役立てるために作られた日本独自の季節の節目の1つなのです。立春(節分の翌日)から数えて88日目を指すので、毎年5月2日頃が八十八夜にあたります。この頃に摘まれた新茶は滋養たっぷりで、中でも八十八夜に摘まれた新茶は末広がりの数字とも相まって長寿や無病息災の縁起ものとされてきたそうです。私がこれを知ったのはほんの数年前のことですが、地元の名産品かつ意味合いとしても素敵で、今さらながらお土産にぴったりだなと思い、その頃からゴールデンウィークに帰省した際には友人や自分用に八十八夜新茶を買って帰るようになりました。どんな味かなとワクワクしながらちょっと特別な気持ちで淹れる新茶が最近の初夏の楽しみになっています。八十八夜新茶はそれと分かるパッケージになっているので、新茶の季節にはぜひ皆さんも探してみてください。

 以前、新茶の時期に九州のとあるお茶どころ出身の同僚と互いに地元の新茶を買って帰ってきて交換し、飲み比べたことがあります。品種など詳しいことは分からないのでその時のお茶がそうだったという感想になりますが、静岡のお茶は甘みがありまろやかな感じ。一方いただいたお茶はすっきりと爽やかな感じだったので、冷茶にしたらより一層おいしく感じました。はっきりとした違いに驚くとともに、その違いによって飲み方を変えてみるのも新鮮で面白かったです。お茶の名産地は全国各地にあるので、これからも静岡のお茶はもちろん色々な地域のお茶を楽しみたいと思います。

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