謹んで新春をお祝い申し上げます。
東京は冬のすがすがしい空気の下、新しい年を迎えました。
年が改まると気持ちもリセットされ新しいことへ挑戦する意欲が湧いて来るのを感じます。
さて、2023年1月にイデア・インスティテュートの日本文化を紹介する絵本の27冊目を発行いたしました。昨年に続き「日本文化の風景」をテーマに、平安から室町時代までの文化を、日本語、英語、フランス語、スペイン語の4言語で紹介しています。日本の文化の歴史においてとても重要なこの時期、現代で言うところのさまざまな「日本らしさ」が誕生しました。
今年の絵本『日本文化の風景Ⅱ-中世の光と影』を制作した絵本委員の編集後記をお届けします。実際の絵本と合わせてお読みいただけたら幸いです。
『日本文化の風景Ⅱ-中世の光と影』編集後記
今回いくつか和文執筆させていただいた中で、平安仏教について調べました。以前鳥取県三徳山を訪れた際、何も知らずに教科書で見た国宝投入堂を見たいと思って行ったところ、登山の格好をした方たちが行列を作っていました。非常に険しい山道を1時間ほど登らなければ、投入堂にはたどり着けないのです。その時は時間もなければ登山ウェアもなかったので断念しましたが、1時間登り切った後の参拝は非常に清々しく神聖な気持ちになるだろうなと思いました。いつか是非リベンジしたいです。
(原稿・編集担当 西村)
学校の歴史の授業では、文化について詳しくふれる機会は少ないと思います。今回、「今につながる文化」という視点で、平安から室町時代にかけて勉強し直す中で、生け花など現代にも続く文化のルーツや、新しいものを在来の文化に取り入れる昔の人の知恵を知ることができました。興味を持ったテーマをかみ砕き、多言語に翻訳した際も内容が通じるよう和文原稿を書くのは難しかったですが、翻訳が完成し、鮮やかな絵とともに本になっていく過程に携われたことはとても貴重な経験でした。皆様にもぜひ楽しんでいただければと思います。
(原稿・編集担当 後藤)
日本の文化や歴史はこれまで美術館などの翻訳の中でいろいろ「のぞき見」することはできましたが、この「日本文化の風景」シリーズの作成に関わってから初めてその文化史の織りなす「ストーリー」がわかってきました。現在も受け継がれている日本文化の裏には、その文化を作り上げてきた、実際生きていた昔の人々のさまざまなドラマがあります。本当に豊かなストーリー性があって、絵本という形にしてみると、それが初めて見えてきます。
(英訳担当 L. Androphy)
絵本制作に携わり今年で19冊目。そんなに携わっていると思うと感慨深いです。今年の絵本は去年の続きになります。今年もまた日本史を調べ直していくと覚えていた年号と違うことに驚きました。例えば鎌倉幕府の成立は1192(いいくに)年と教わっていたのですが、今は1185(いいはこ)年と教えているそうです。時が経てばいろんな文献が見つかって過去の歴史も変わっていくのですね。みなさん今年の絵本、いかがでしょうか?みんなで苦労して作った文章も合わせて楽しんでいただければ幸いです。
(原稿・デザインレイアウト担当 前田)
例えば現在を生きている私からすると、源氏物語の主人公「光源氏」の行動は大変妖しく感じられます。けれどもコンピューターが発達して、日々の生活環境の変化だけでなく、人間独自の活動と思ってきた音楽やアートなどもコンピューターが作りだすようになると、人の自由な行動として残されてくるのは恋愛といった分野かもしれません。
1000年以上前に創作された物語の中に、もしかして現在で最も役に立つ内容が含まれているのではと考えています。
(原稿・イラスト担当 谷)
この絵本を制作中の2022年、日本の中世にどっぷりはまりました。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』がまさに鎌倉時代だったので、当時の文化について調べるかたわら、時代背景はドラマを観て確認していました。源平合戦、運慶と鎌倉幕府の関係、蹴鞠(けまり)など都の文化の影響、武士の装い、等々。個人的には鎌倉時代に絵巻の傑作が数多く誕生していたことが驚きです。あんなにも戦乱や陰謀に明け暮れた時代に、すばらしい絵巻(「絵詞(えことば)」とも言う)がいくつも誕生しています。今回絵本で取り上げた『伴大納言絵巻』のほか『一遍上人絵伝』、『平治物語絵巻』、『春日権現験記』、『地獄草子』など、当時の風俗や戦乱の様子がありありと伝わってくるものばかりです。何百年たって作者不詳となっても、傑作は長く大事にされる。そんな長く愛される絵本をこれからも作っていけたら幸せです。
(発行人 福澤)
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