中判フィルムカメラと巡る、グレートブリテン島の旅

2013年7月、グレートブリテン島を縦断する旅に出ました。

ロンドン・ヒースロー空港からソールズベリーとその近郊のストーンヘンジ、古い城下町のチェスター、ポントカサステ水路橋のあるウェールズのレクサムを訪れ、湖水地方のウィンダミア、スコットランドのエディンバラ、グラスゴーを経て、ハイランド地方を抜けてマレイグという港町から航路でスカイ島へ寄り道し、未確認生物の目撃談で有名なネス湖の北端にある街インヴァネスまで北上しました。インヴァネスからは飛行機で一気にロンドンまで南下し、南岸の街ブライトン、白亜の絶壁セブンシスターズのあるシーフォード、イングランドで最も美しい町の一つと言われるライを巡ってロンドンへ帰ってくる、まさに縦断の旅でした。

この旅で使用したカメラは「中判フィルムカメラ」です。その名の通り、中判フィルムを使用するカメラ。
デジタルカメラが登場する以前に広く使われていた、小さな缶に入ったあの写真用フィルムは35mm判フィルムカメラと呼ばれるものです。写真1枚当たりのフィルムの面積は24mm×36mm。一方、旅で使用した中判フィルムカメラは二回り以上大きいフィルムを使用し、写真1枚当たりのフィルムの面積は56mm×70mmです。おおよそ6cm×7cmなので、67(ロクナナ)判と呼ばれています。フィルムサイズが大きい分、被写体をより精細に写し取ることができます。

カメラそのものも大きく重たいです。普通の一眼レフカメラをそのまま巨大化させたようなフォルムで、道行く人の目を引きます。「あなたは写真家なの?」と声をかけてきたイギリス人は一人ではありません。
このカメラは由緒正しき一眼レフカメラですので、中にレフレックスミラーと呼ばれる鏡が入っています。フィルムサイズが大きいので、ミラーのサイズも当然大きくなります。小さな手鏡ほどの大きさの鏡が、撮影のたびにカメラの中で跳ね上がります。その音や衝撃は想像以上です。誰でも最初の1枚目の撮影で「壊れた」と思うでしょう。

この旅の撮影で使用したのはすべて「リバーサルフィルム」と呼ばれるフィルムです。
かつて身の周りにありふれていた写真用フィルムは、明暗が反転していませんでしたか?色調も反転していて、愛らしいはずの笑顔がおぞましく見えるネガフィルムです。でもリバーサルフィルムは違います。見たままの色がフィルムに焼き付けられています。フィルムそのものが完成形なのです。リバーサルフィルムをライトテーブルの上に置いてルーペで覗いたときの感動は、言葉で表現することができません。それでも強いて表現するなら、それはまるで、鮮やかな光線をきらきらと放ち続ける宝石のような世界です。そしてこれは、モニターや紙の写真では再現することのできない世界なのです。

 

断っておきますが、ネガフィルムにも良い点がたくさんあります。この旅にモノクロネガフィルムやカラーネガフィルムも持って行っていたらどんなによかったか。もう一度イギリスへ行けるなら、今度はたくさんのモノクロネガフィルムをバックパックに詰めるでしょう。それぞれのフィルムに、それぞれの撮影の楽しさがあるのです。

最後に、お伝えしたいことはたった一つです。
旅に中判フィルムカメラは不向きです。あまりにも重たい。しかし、持ってゆくだけの価値がある。

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