会社の近くにある公園の立て看板にこう書いてあった。これを読んだとき私は、これは解釈が分かれるなと思った。
花火自体を禁止しているのか、それとも迷惑にならない範囲ならやってもいいのか。
この文章だとはっきりしない。そして「迷惑」かどうかを花火をする側が明確に判断するのは難しいのではないかと思い、また同時に「花火を完全に禁止するには忍びない」という管理者側の気持ちが行間から滲み出ている。
まあでも、この看板を見て花火すること自体をやめようと思うような人たちは、(私もそうだが)元々人の迷惑にならないように生きている人たちだろう。
あと「花火」の文字と「禁止」の文字だけ強調のために赤字になっているけれど、時間が経つうちに赤いインクだけが薄れて消えてしまっている看板を時々見かけることがあるので、この看板もいつかは「近隣に迷惑になる__は__しています」となってしまうかもしれない。そしてもしそうなってしまったら、私はきっと大喜利せずにはいられないな。
「近隣に迷惑になる野郎は追放しています」とか
「近隣に迷惑になる波動は増幅しています」とか
「近隣に迷惑になる貴殿は突出しています」とか…。
そんな取りとめのないことを考えながら少し歩いていくと、今度は
「飲酒等による迷惑行為は禁止」
という立て看板があった。おや。そうくるか。
なるほどこの場合には「迷惑行為」が禁止なのであって「飲酒」は禁止ではない、という解釈が正しそうだ。そして飲酒「等」と言っているのだから、「なんにせよ迷惑行為は禁止」という意味合いであるのは明らかだろう。そして、春にはお花見もできそうなこの公園で飲酒を完全に禁止するには忍びない、という管理者側の気持ちがまたもや行間から滲み出ている。
こういうのはほんのちょっとの言い回しの違いなのだが、このあたりが日本語の奥深さだななどと思う。
「ここで立ち
地下鉄で、ホームに出る下りエスカレーターを降りたら、直後にこの言葉が目に入ってきた
「ここで立ち…?」
一瞬足を止めそうになる。
でもエスカレーターの出口で立ったら危ないよね、どういうこと?と、視線を切り替えると、
「ここで立ち
止まらないで下さい」
…なるほど。そういうことね。ここで立ち止まるなと。そうだよね。
でも、そこで改行しない方がいいよね!?
何故ここで改行することになったのだろう。
1行では収まりきらないが、文字のサイズは変えたくない。編集過程でこの必要性が生じるケースがあることは職業柄痛いほど理解できるが、ここで切るのはなんというか強引な気がする。どこかで文を改行しなければならず、キリのいいところはどこだろうと思った時、「立ち止まる」は「立つ」と「止まる」の複合語なのだから複合前の区切りが1番いいと思ってしまうかもしれないがそれは逆で、複合語だからこそ切らない方がいいこともあるのだ。例えばこれが
ここで食べ
歩かないでください
ならどうだろう。「ここで食べてください、そして歩かないでください」という意味なのかと一瞬思ってしまわないだろうか。
一見中途半端な区切りに思えても、そこは
ここで食べ歩か
ないでください
と表示する方が見る側の理解は早いのではないかと思う。
喉が渇いたので自動販売機でジュースを買う。飲み終わってさあゴミ箱に捨てよう、ゴミ箱発見、丸い口が二つ、よし、缶とペットボトル専用だな。そう思って捨てようとしたが、ゴミ箱の上にこう書いてある。
「ビン・カン・ペットボトル
ここではありません!」
あら…?違うのか。
じゃあこの二つの丸い口は何のゴミ箱なんだ?
と思ってよく見れば、
ビン、カン、ペットボトルの塊を上から下の順に読み進めたその視線は、そのまま直下の強調表示へ流れていくのが自然な気がするのだが、そう思うのは私だけだろうか。
そしてよく見るとそれぞれの項目の下に小さく英語表記もあり、日本語がわからない人たちへのメッセージにもなっているようだが、紙パックなどの左にある「×」印、この記号は言語によっては「NG」を意味しないこともあるので、間違って捨ててしまう外国人旅行者もいそうだな、などと思う。
街の中には他にもまだまだたくさんの「ん?」があり、ちょっと不親切だったり、不完全だったり、誤解を生みそうだったりもするかもしれないが、実は私はいつもその不完全さを楽しんでいる。
多少不完全でいてくれた方が、いろんな想像が掻き立てられるし、「いやいやそれは…」などと頭でツッコミを入れることで静かなコミュニケーションを楽しむこともできる、そんなふうに感じながら、日々の散策を楽しんでいる。
最後に、話はちょっとずれるが気になっていること。
とあるリサイクルショップの買取コーナー、順番待ちの列の床にこんな注意書きが書いてあった。
|
STOP |
もちろんこれは「買取精算をお待ちの方はこちらの列で止まってお待ちください」という意味なのだが、これを見ると私は毎回、
「STOP!薬物乱用」
という標語を想像してしまい、「禁止されている買取精算に手を染める自分」を想像し、心の中で何となくほくそえんでしまうのであった。
おわり。
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