
イデアでは毎年様々なテーマで絵本を発行しています(イデアの絵本製作)。2022~2024年は「日本文化の風景」シリーズと題し、古代から近世までの文化のうち現代にも受け継がれているものを取り上げました。私は第2, 3弾(2023, 2024年)の日本語原稿執筆を他のメンバーと分担して担当しました。普段文章を読む機会は多くても、まとまった量を書くことはなかなかないので想像以上に難しかったですが、その分学びも多く、日々の業務で文章の解釈に悩んだ際など、時折この絵本の経験を思い出します。
イデアの絵本では、見開きページに日本語を含む4言語と絵が載ります。当然ですが紙面には限りがあるので情報を整理し、伝えたいことは何かをはっきりさせる必要があります。そのためにまず、執筆にあたって調べた情報を取捨選択し、主題が伝わるように文章の組み立てを考えます。日本特有の概念は各国語に翻訳すると補足説明が入ることが多く、文が長くなります。その点も意識しながら、翻訳された時の分量をイメージして日本語を書く必要がありました。翻訳されることを前提にわかりやすい文構造にすることも大切です。日本語は主語の省略が多く、主述関係や修飾関係が分かりにくくなりがちです。そのため各国語に訳すと、書き手が想定していた主語や修飾関係とは異なる文になってしまうことがあります。一番伝えたいことが決まれば、必要な要素のみを残す判断がしやすくなり、すっきりした文ができますし、伝わりやすい順序で文章を組み立てることもできます。大変ではありますが、「思っていたのと違う」を防ぐためにも原文をしっかり作ることの重要性に気づかされました。また翻訳をイメージして原文を書く体験は新鮮で、書き手側もただ書けばいいわけではなく、翻訳者やその先の読み手がどう受け取るか想像し文章をまとめることの大切さを学ぶことができました。
絵本制作でも日々の業務においても、成果物完成までには多くの人が携わります。中でも翻訳会社は、文章の書き手であるお客様と読み手をつなぐ、間に入る存在だと思います。翻訳ご依頼時には、翻訳の使用目的に合わせた、表現や文体などのご要望をお客様から受けることもあります。補足として参考資料をいただくなど、お客様にもご協力いただきながら、伝えたいことは何なのか汲み取り、読み手に伝わる翻訳を仕上げていきます。お客様の思いや考えが伝わる翻訳を届けられるよう、これからも精進していきたいです。
余談ですが、子どものころは毎週日曜夜家族そろってNHKの大河ドラマを見るのが習慣でした。今は気が向いたら見るという程度ですが、ちょうど第2弾で平安時代を扱ったことから2024年の『光る君へ』には興味がありました。フィクションではあっても、建物や衣装などが3Dで存在しているのを見ると、原稿執筆時に想像していた平安時代の雰囲気が形になっているようで、第2弾のテーマでもある「中世の光と影」を感じることができました。2025年は第3弾の『近世の彩り』で触れた蔦屋重三郎が主人公だそうで、彼の生きた江戸時代がどのように描かれるのか楽しみです。
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