日本語の「オノマトペ」

最近興味を持っているのが、日本語の「オノマトペ」です。

「オノマトペ」。
日本語らしい言葉ではないので、なんとなくフランス語かしら、と思っていたのですが、調べてみたところ、ギリシャ語のὀνοματοποιία(発音はオノマトピィーヤと聞こえます)を語源とする英語Onomatopoeiaが元のようです。簡単に言えば擬音語、擬態語を指すようですが、最近では「オノマトペ」という言葉を耳にすることも増えた気がします。音がかわいらしく親しみやすいからでしょうか。

先日たまたま見たYouTubeの動画で、外国人が「日本語はオノマトペが多い。」と言っていました。
確かに漫画を見ると「ガガガ」、「ドバーッ」、「ふわふわ」など擬音語、擬態語があふれており、ページ全体が擬音語のみ、などというのも目にしますし、テレビ番組の食レポを見れば、「コリコリ」、「モチモチ」、「ジュワ―」など、それだけでどんな食感の食べ物かわかるような言葉が多く使われています。
また、普段の会話や文章の中でも「うるうる」、「ニヤニヤ」、「ドキドキ」などを耳や目にすることがあり、日本人のわたしでもオノマトペの多さは実感しています。

そんな中、出会った動画の中でおもしろいと思ったのは、「桃が川を流れてくる様を日本語では『どんぶらこ、どんぶらこ』*1と表現する。」というコメントです。
桃が流れる様子を表現するだけのために特定の言葉がある、ということに外国人は驚くようです。
確かに、童話「桃太郎」に親しんでいるわたしたちは「どんぶらこ」と聞いただけで、「普段食べるような小さい桃ではなく、大きな大きな桃が水に浮きつ沈みつしながらゆったりと流れてくる様」が思い浮かびますよね。
では、これが英語になるとどうなのかしら?と思ってインターネットで調べてみたところ、
「どんぶらこ、どんぶらこと大きな桃が流れてきました。」は以下のように英訳されていました。*2

“a huge peach came floating down the river, bobbing up and down.”

これを逆にGoogle翻訳で和訳してみたところ、「大きな桃が上下に揺れながら川を下って来ました。」と訳されました。英語になると”bob”という動詞で水に「浮きつ沈みつ」の意味を表現していますが、オノマトペは使われていませんね。

このように、私たちは幼児の頃から童話や童謡を通してたくさんのオノマトペに触れ、それらが刷り込まれている気がします。上記の「どんぶらこ」もそうですが、童謡「かもめの水兵さん」の「波にちゃぷちゃぷ浮かんでる」や、「汽車、汽車、シュッポ、シュッポ」、「どんぐりころころ、どんぶりこ」など、オノマトペだけで自然に情景が浮かんでくる気がします。

おかげで、お腹が「ぐうー」だと、お腹が空いているのがわかりますし、胃が「キリキリ」だと、悩みや緊張で胃が痛いのかな、などと想像できます。雨が降る様も「ポツリポツリ」(降り始めの様子)、「しとしと」(静かにずっと降り続いている感じ)、「ザーザー」(音を立てて強く降る雨の様子)、「バシャバシャ」(雨が地面を叩きつけている様子)まで、オノマトペだけでどの程度の強さの雨なのかがわかります。
英語にも雨を表現するオノマトペはあるようで、調べたところ、“pitter-patter”、“drip-drop”、“rat-a-tat”などが出て来ましたが、それ以外はhammering rain(叩きつけるような豪雨)とかdrizzling rain(霧雨)とかswooshing rain(しとしと雨)のように、動詞のing形を形容詞として使うパターンが多いようでした。
これもインターネットの情報ですが、日本語には、オノマトペ辞典*3に収録されているオノマトペだけで4,500もあるそうで、英語の3倍、フランス語の9倍もあるそうです。

こんなことを調べていたら、ますますオノマトペに興味が湧いてきました。オノマトペについては専門家がたくさん論文を書いているようですので、探して読んでみようと思います。

*1 「どんぶらこ」については、神戸教育短期大学の学長を務めていらっしゃる三木麻子さんという方が詳しく調査されたようで、地域や絵本の作者によっては「つんぶら つんぶら」や「つんぷか かんぷか」などという言いかたもあるようです。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyotanlibfd/4/0/4_5/_pdf

*2 出典:https://www.jitco.or.jp/webtomo/pdf/oldstory_momotaro_en.pdf
*3 「日本語オノマトペ辞典」https://www.shogakukan.co.jp/books/09504174

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