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家族に会うのはもちろんですが、今回のミッションは「PCの新調とデータ移行・セットアップ」。
実家ではデジタル機器に疎い祖母と父に代わり、母が一人で回線契約やアカウント管理、ネット利用全般をこなしています。
Windows 95以来PC歴30年になる母ですが、近年では老齢のせいか明らかな詐欺メールにも動揺するようになりました。
「親のプライバシーもあるし…」と迷いつつも、手助けを申し出たのが3年前。
迷惑メール判定を「強」にする。メルマガを配信停止する。使い回しパスワードを再設定する。
とても帰省中の限られた時間で片付く量ではありません。
そこで思い切って実家のPCを新調し、帰省しなくても遠隔操作できる環境を整えようと考えたわけです。
朝から深夜まで作業を続け、母にむけて遠隔操作時の手順書まで用意。
私は夏休みに一体何をしているんだ? もはや仕事では!? いや、今やれば数年後が楽になる! そう自分に言い聞かせたものの、正直疲れました。
なにせ今回は遠隔操作を可能にしただけで、アカウント整理はこれから。迷惑メール対策も長期戦になりそうです。
おまけに「2段階認証」「デバイス登録」「ワンタイムパスワード」などセキュリティ強化が進む昨今では、家族であっても代理手続きが難しく、のんびりもしていられません。
……あれっ?
かつて私は、デジタル化すれば何でも便利で簡単になると楽観していたけれど、最近はセキュリティの名目でどんどん「遠回り」させられていないか…?
何をするにもまずアプリ。ダウンロードにはパスワード認証。事前にアカウント作成が必要で、メール受信から30分以内に本登録。ポイントを貯めるには他IDと連携し、再度パスワード入力。そして「私はロボットではありません」にチェック……。
ああ、これはものすごーーーく、面倒だ!
その時やっと、デジタルに強かったはずの母がひどく困惑する気持ちが理解できたのです。
30年前、母にとってPCや携帯とは、旧友とつながり、手作業から解放してくれる便利で楽しい道具だった。でも今や不便さの象徴なのかもしれません。
それからは母へのもどかしさや当たりの強さ(笑)も和らぎました。
「今月の請求額、間違いなさそう?」
「ほんとだ、エラーが出るね。あとで調べておくよ」
「こんなに話しても無料だなんて、アプリ通話って便利だね~」
遠隔操作で画面共有しながらサポートしていると、まるで自分がデジタル版「かかりつけ医」になったような気がしてきます。会話の内容はさながら…問診!?
途方に暮れていた母も徐々に不安が解消されてきたようで、少し安心しました。
私はイデア・インスティテュートでデジタル機器の取扱説明書を制作しています。
母のように困っている誰かの力になれているかもしれないと思うと、やりがいや誇りを感じます。
その一方で、頻繁にアップデートが走るデジタル機器に対し、取扱説明書では網羅できない無力感も覚えてしまいました。
端末の性能、環境、設定、習熟度、年齢層、目的など条件が異なる中、本当に困ったとき、ユーザーはすぐに解決策にたどり着けているだろうか?
実のところ、症状を総合的に判断してくれる、それこそ「デジタル版かかりつけ医」を求めているのでは?
近い将来、きっと対話型AIが「デジタル版かかりつけ医」の役割を担ってくれることでしょう。
そうすると取扱説明書は「AIに学習させるための教科書」に変化していくのかもしれません。
つまり…無力感を覚えている場合ではない!!
このお盆は、取説制作に従事する者として改めて身の引き締まる機会となりました。
さて年末はゆっくりできるでしょうか。
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